STORY41 兄上と弟 ページ44
突然帰ってきた私に、屋敷は騒然となった。
見知った顔ばかりと思いきや、初めて見る新顔もいて。
時の流れを感じた。
父上への謁見を取り計らうよう、侍女長であるウメさんにお願いをし、私室で待つ。
まだ私の部屋があったことに驚いた。
しかも、出て行った時のままだ。
塵一つない手入れの行き届いた部屋に、心が温まった。
(ウメさん、待っててくれたんだ…。)
きっとウメさんが指示を出してくれたんだ。
でないと5年も使われてない部屋がこんなに綺麗に維持されるはずがなかった。
それに出してくれたの紅茶は私のお気に入りだった。
5年前と何も変わらない好きな味。
ドドドドド…
…せっかく心が温まっていたのに、この音は。
規則正しく、そして素早い足音。
家の中にも関わらず思い切り足を動かし、私の部屋に近づいてくる。
これは___。
「っ姉上!!」
忙しなく足音を響かせ、ノックもなしに勢いよく部屋の扉を開けたのは___弟の楓(かえで)だ。
私の4つ年下の可愛い弟。
…そういえば総悟君の方が1つ年下ね。
5つ歳をとった弟は、可愛かった頃の面影を少し残しつつ、もうほとんど大人の顔をしていた。
「楓、ノックをしなさいといつも言ってるでしょう。あと屋敷内で走っちゃダメよ。」
もう小さくない身体で屋敷を走り回るなんて、マナー違反だし迷惑だし…いろいろ言いたいことがある。
まあでも___。
「ただいま。寂しい思いさせてごめんね。」
優しく抱きしめると、小さな背中が揺れた。
すっかり背は私を抜かしたけれど、なぜだか小さく感じる。
これは多分、一生。
いつも強がる弟が素直だなんて、余程寂しい思いをさせたに違いない。
「ちょっとー。お兄ちゃんのことも忘れんなよ。」
拗ねたような、茶化すような雰囲気で後から入ってきたのは兄の椿(つばき)だ。
兄上はそっと弟と私の両方を包んだ。
「兄上、久しぶり。」
「おー。元気そうだな。」
しばらくこの再会を噛み締めた。
…本当に長い間。
「あのーそろそろ…。」
「ダメ。」
「んじゃ俺もダメー。」
「ええ…。」
なかなか離してくれないのだこれが。
いつもツンデレな弟がもうデレデレだ。
兄上なんか面白がって便乗するし。
[弟 楓]
成田 楓(かえで) 19歳男性
・Aの4つ下の弟、次男
・Aいわく、素直じゃないが根は優しい弟
[兄 椿]
成田 椿(つばき) 26歳男性
・Aの3つ上の兄、長男
・Aいわく、適当に見えるが頼りになる兄
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たいる(プロフ) - わかさん» こっちにもコメントくださってたんですね!笑ありがとうございます。笑っていただけて良かったです笑笑 (2021年7月11日 17時) (レス) id: 14bca84003 (このIDを非表示/違反報告)
わか - ミョウバンは笑った!!笑笑 (2021年7月7日 21時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たいる | 作成日時:2021年1月8日 0時