STORY01 出会い(1) ページ3
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見廻りと言う名のサボりをした帰り道。
その女は、団子屋の前でチラシを配り、客引きをしていた。
「よろしければどうぞ貰ってください。」
丁寧な言葉遣いと共にふんわり綺麗に笑う。
綺麗な女だと思ったが、それだけだった。
元来俺はチラシ配りの前は避けて通るタチだ。
断るのは面倒だし、受け取ると荷物になりもっと面倒なのがわかっているから。
かと言ってガン無視も少し気が引ける。
その辺のおっさんなら別だが。
しかしこの道は避けて通れるほど広い道ではない。
人が余裕ですれ違える程度の広さではあるが、チラシ配りを避けきれそうになかった。
それに屯所に帰る近道でもあった。
…ッチ、通るしかねェ。
たかがチラシ配りのために回り道なんてありえねーし…。
面倒だが断りの意を込めて会釈でもしようと決め、仕方なく通ることにした。
その女の前で会釈をしようとしたそのとき、女が一瞬下を向いた。
チラシの束から1枚を引っこ抜くために、一瞬チラシを見る必要があったらしい。
…チャンスだ。
この一瞬で通ってしまえ。
俺ともなれば、一瞬で通り過ぎるなんてどうってことねェ。
…頭ではわかっていた。
でも俺の目はどうやら馬鹿になったみてーで、その女から目が離せない。
色素の薄い髪は俺と似た亜麻色で、サイドを綺麗に編み込み後ろで一つにまとめている。
いわゆるお団子。
団子屋だけに。いや今のやっぱなし。
瞳は儚げに下を向き揺れている。
紺色の着物を着ているからか、白い肌が際立って見える。
どこにでもいそうな女。
いやこんなべっぴん、そうそういやしねェだろうが…。
でも、どこかにはいそうな顔だ。
やっぱり俺の頭はどうかしたらしい。
正常な判断ができていないと見える。
彼女の近くに寄ってしまったことが俺の敗因だ。
だってちょうど俯いた彼女の目はこちらからは見えねェ。
見えなかったら。
___だってその姿は。
「…姉上?」
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たいる(プロフ) - わかさん» こっちにもコメントくださってたんですね!笑ありがとうございます。笑っていただけて良かったです笑笑 (2021年7月11日 17時) (レス) id: 14bca84003 (このIDを非表示/違反報告)
わか - ミョウバンは笑った!!笑笑 (2021年7月7日 21時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たいる | 作成日時:2021年1月8日 0時