STORY14 自覚 ページ16
彼女とは少し距離を置こう。
…そう決めた時に限って出会うもんだ。
「あら、総悟君! こんにちは、今日は非番なのね?」
「こんにちは、Aさん。そうでさァ。」
「もう、何で勤務中の時には来るのに非番の時にはきてくれないの! 逆よ逆!」
道端でばったり遭遇した。
不服そうな顔でこちらを見るAさんに、つい笑みが溢れる。
元気そうで良かった。
「すいやせん、つい仕事で疲れるとAさんの顔が見たくなるんでさァ…。」
「むー…そう言われると何も言えないわね。私も仕事中に総悟君の顔が見られて嬉しいわ。」
顔が見たい、なんかで絆されるAさん。
バカだなぁ…。
でも、可愛い。
___やっぱり、好きだなぁ。
あれ?今俺何を?
やっぱり好きだなぁ?
Aさんが好きなんて、今改めて確認することでもない当然の話だ。
だってAさんは上品そうに見えて中身はとても可愛らしい。
年甲斐もなくはしゃいでる姿なんて最高に可愛い。
俺のこともすごく好いてくれているし、大切にしてくれてるのがわかる。
Aさんが喜ぶなら何でもしてあげたいし、絶対に守ってやりたい。
それに一緒に話すのが楽しくてすぐ時間が経つし、すぐに会いたくなる。
俺に向かって優しく笑いかけてくれる顔は誰にも見せたくねーし、誰にもAさんは渡さねェ。
…あれ?
俺語りすぎじゃね?
これは何だ?
まさか。
いやでもそんなはずは…。
「総悟君? どうしたの、そんなに思い詰めて考え込んで。相談ならいつでも乗るからね。…あれ? なんだか顔熱くなってきた?」
心配そうに顔を覗いてくるAさん。
顔が近ェけど、それどころじゃねェ。
考えすぎて顔に熱が集まっちゃったの?
大丈夫?
なんて慌てるAさんの声が遠い。
ああ、やばい。
こんなの。
…こんなの。
・
・
土方は、きっと気づいてたんだ。
だから…。
「…大丈夫でさァ。急用を思い出したんで、ちょっと戻りやす。明日団子屋行くんでそのときは、また。」
「え? ええ、わかったわ。待ってるね。」
思考が追いつかなくて、急用なんて嘘をついた。
とにかく屯所に戻って、自室に籠ろう。
Aさん心配してくれてたのに失礼だったか?
俺はちゃんと笑えてたのか?
Aさんの笑顔をあまり焼き付けられなかった。
せっかく団子屋以外で会えたのに。
そんな思考がぐるぐると頭の中を回る。
ああ。
やっぱり惚れてる。
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たいる(プロフ) - わかさん» こっちにもコメントくださってたんですね!笑ありがとうございます。笑っていただけて良かったです笑笑 (2021年7月11日 17時) (レス) id: 14bca84003 (このIDを非表示/違反報告)
わか - ミョウバンは笑った!!笑笑 (2021年7月7日 21時) (レス) id: 44294a6bf9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たいる | 作成日時:2021年1月8日 0時