欠けたもの 3 ページ6
Aは父の部屋から遠く離れた、最上階の部屋へと向かった。
小さくノックをして部屋に入ると、先程の部屋とは対照的に眩しい灯りのともった空間が広がっていた。
Aの兄＿＿＿エリヤは、入ってきた妹を気にする様子もなく羊皮紙にペンを走らせている。
｢＿＿＿兄さん……ごめん。ちょっとだけ、いい？｣
｢……何？ 今暇じゃないから、早くして｣
エリヤはAの方を見向きもせずに答えた。
その態度は真冬の海よりも冷たい。
｢あの、羽根ペンのお礼がしたくて……その、新しいハンカチを買ったんだけど…｣
Aは兄の顔色を伺うように、ぽつりぽつりと喋り始めた。
しかし、エリヤの冷たい態度は変わらなかった。
｢……必要なものを用意しただけだから。お礼されるような事じゃないでしょ｣
｢ごめん……でも嬉しかったから｣
……迷惑だったかな？
Aは視線を落とし、手に抱えた紙袋をぎゅっと抱き締めた。
｢……そう、好きにすれば｣
エリヤがそう言うと、Aはほっとしたように笑顔になった。
相変わらず素っ気ない返事だったが、受け取ってもらえるだけで嬉しかったのだ。
｢ありがとう、……じゃあ、おやすみなさい｣
Aは控えめな声でつぶやき、再び静かに部屋から出ていった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 94人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はじめ(プロフ) - マニ。さん» 応援ありがとうございます！あまり頻繁にはお返事できないかもしれませんが、それでもよろしければよろしくお願いします！ (1月31日 6時) (
レス) id: ee6ba55d5e (このIDを非表示/違反報告)
マニ。(プロフ) - はじめさん» ✉️。こんにちは！とても面白いです！もしよろしければ一緒にボードで会話しませんか？これからも更新応援してます！💖 (1月21日 16時) (レス) id: c4b8377817 (このIDを非表示/違反報告)
はじめ(プロフ) - ケロッとさん» 応援ありがとうございます!!嬉しいです……!! (2019年11月22日 22時) (レス) id: ee6ba55d5e (このIDを非表示/違反報告)
ケロッと - ハリポタ作品をみていたらこんなに素晴らしい作品を見つけてしまい手が止まりませんでした！本当に神作品です！頑張りすぎずに更新頑張ってください！応援してます (2019年11月22日 19時) (レス) id: 35751de350 (このIDを非表示/違反報告)
はじめ(プロフ) - さくらんぼ＆チェリー@サブさん» そう言っていただけて感激です…! 力の限り頑張ります!! (2019年11月19日 7時) (レス) id: ee6ba55d5e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はじめ | 作成日時：2019年11月10日 16時
