【d!】おいしくたべれる賞味期限。【zm】

▽ ページ35

＊


『ぞむ、？あせすごいよ、？』


不安そうにしとるAが俺の名前を

可愛い小さい口で呼ぶ

近づいてきたAのちぃさい手が俺の頬を滑る

汗が垂れる前にAの手に張り付いていく

思わず見惚れる

瞬間、風が吹いてAのフードが揺れて

はずれた


zm「あ」


それと殆ど同時

同時に、さっき見た得体の知れへんナニカが

Aに重なって見えて

思わず、俺は後退った

頭の中ではちゃうって言っとる

やけど、

やけど、目の前に見えるのは

明らかにさっきのナニカで

体が拒絶する

気持ち悪い

近づかへんで

お願いや


『ゾむ、？...ゾム、？...ぞむ、！？』


Aとナニカの声が重なって聞こえとる

...なんや、これ、

手が真っ赤に染まっとるがわかる

ぬちょっとした気持ち悪い音が聞こえて

その後に生ぬるい何かを感じる

血腥い

目の前に居るのは、

得体の知れへんナニカと

少年に見える男


男は泣きながら俺を指差して

それから、絶望したような表情をした後

崩れ落ちた

足が、胴が、胸が、腕が、手が、指が、首が

頭が、顔が、目が、鼻が、口が、耳が、

ばらばらになって

それは床に落ちる


どうしていいかわからへん


ああ、そうや

これは、俺や

俺の記憶や

思い出した

初めて人を殺したのが見られた時の記憶や

俺、あん時、見た人までを___


怖い、苦しい、

なんでこんなもん見せられへんとあかんのや

もう、思い出したくなかったんに


ふと、俺の頬に冷たいのが当たったのがわかった

よくわからへん、

よくわからへんけど、それが手やと言うことだけがわかって

その手は、ちぃさくて柔らかくて

それでいて、おぉきくて硬かった


『ぞむっ、！！！！！』

zm「ぁ」


Aの声が耳に聞こえる

目の前には、泣きそうな顔したAと

Aを睨みつける大きなオトナたち

ニンゲン

ニンゲン、は、怖い

汚い

そのニンゲンがAに触れようとしとる

Aに刃を振るおうとしとる

Aの目から、涙がこぼれ落ちる

そんなの、あかん

これ以上、汚れたら、Aは

Aは____

瞬間、俺は、Aを抱きかかえて走り出した


zm「っは、はっ...はっ、はっ...」


息が切れる、思うように体が動かへん

でも、それでも、

逃げへんと、

誰も、誰も来ぉへん所に

これへん所に、

早く、早く、早く、早く、！！！！

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