ブランクルーン - ﾌｪｲ･ﾙｰﾝ - (ページ49)

今日:9 hit、昨日:6 hit、合計:8,028 hit

❑ 行ってきますページ49

ㅤ
戦いの道具として拾った本人なんて、好きにならない。
今だってAは、皇帝の命令で来る日の“皇帝”の為にそばに居ただけだった。

その事に気付いてしまえば、

心を通わせた大切な人フェイを傷付け、踏みにじる未来も
仲間として手を広げた天馬達から背を向ける未来も、全て。

Aの心が、瞳が他の物を映すことへの醜い嫉妬心。

「僕はずっと、君が恨ましいとおもってたよ…SARU」
「え？」

フェイの言葉に、半身を起こしたSARUは何寝ぼけたこと言ってるの？とフェイを見詰めた。

フェイは、掌を見詰め情けない話だよ…と握り締める。

「Aの力の暴走を受け止められるのはSARUだけ。僕の力じゃ、苦痛を和らげる事も出来なかったんだ…」
「…確かに、安定期に入る前はSARUが常にそばにいたわね」

メイアが唇に手を添え、記憶を手繰り寄せる。
言われてみれば…と、口々に幼い日々を思い出す。

「…力があって、皇帝で。誰よりもAが信頼していたのはSARUだったから」

俯いたフェイの言葉に、ダク、ホス、ニケもピグも、皆が頷いた。
Aだけじゃない。SARUの心に力に魅入られたからこそ集った仲間がいる。

フェーダ全員が一目置き、信頼を寄せたのはSARUだ。

「それでも、Aを見つけ出すのは譲れない」
「…え？」

フェイは真っ直ぐにSARUを見詰めた。
唖然としたSARUは、ただフェイを見詰め返す。

「約束したんだ、Aと」
「……約束？」
「うん。名前を呼んだら、必ず駆けつけるって。Aはずっと、僕を呼び続けていたから……」

今もきっと、どこかで僕を待っている。

クロノストーンになってからも、ずっと響いていた。
フェイの名前を呼ぶ声が、ずっと。

だからこそ、譲れない。

フェイの眼差しに、SARUは深く溜息をついた。

「あーぁ、完敗だよ。というか、初めから勝機なんて無いけどね」

とすんと、仰向けになり空を仰いだSARUは、やめだやめ〜と。
力無くその手を床へと下ろした。

「行っておいでよ、君ならAの願う未来が掴めるんだろう」
「…Aの願う未来？」

首を傾げたフェイに、SARUは空間に座標を映す。

「フェーダ全員の未来…。それが、あの子の願う未来」

フェイも、SARUも、Aすらも欠ける事がない
文字通り、フェーダ全員がワクチンを打ち、大人へと未来を歩む願い。

座標を写し取ったフェイは、優しく微笑む。

「それは皆の願いでもあるだろう？」

ㅤ