ブランクルーン - ﾌｪｲ･ﾙｰﾝ - (ページ16)

今日:3 hit、昨日:6 hit、合計:8,022 hit

❑君に出会う物語ページ16

ㅤ

何度も、何度も時を渡り続ける。

疲弊し、キャラバンから動けないワンダバへ声をかけては、走り書きされたメモを片手に稲妻町を駆け出したフェイ。

あの日の今日、この場所で。
この河川敷で天馬とAと3人で語った。

エルドラドとの試合のない今日のこの日であれば、Aのインタプトの可能性は低い。

それなら、居てもいいはずなんだ。

祈りを込め、2本の両足で河川敷へ駆け出せば確かにそこに、君はいた。

天馬とフェイとAの3人はベンチへ腰をかけて、語り合う。
そう何でもない日だったから、Aはまだそこに居た。

日が沈み始めれば、もう帰ろうか。そう声をかけて立ち上がる。

ふわりと、お気に入りのクッションに跨ったAを呆れたようにフェイが止める。

「A、人目があるからちゃんと歩いて」

思い出したように地に足をつけて、こくりと頷いては歩き出したAを見て、胸をぐっと掴まれて感情が込み上げてくる。

そう、そうだった。確かにあの日のこの瞬間、フェイはAに歩くように注意をした。

この時代、SSC遺伝子を持ったものは存在しない。その為、未来では見慣れたAの移動方法はここでは異端だったのだ。

そうして、あの日。

Aは遠くを見つめて、フェイに声をかけたのだ。

“フェイ、先に帰ってて”

「え？大丈夫？1人で帰ってこられる？」

当然のように声に出して返事をしたフェイに、先を歩いていた天馬が不思議そうに首を傾げた。

「A何か言ってるの？」
「うん。先に帰っていて、って」

大丈夫？と心配そうな天馬に、Aはこくりと頷いて
ワンピースの裾を揺らし、河川敷へと降りていった。

「気を付けてね」

大きく手を振ったフェイに、小さく頷いたAは2人の姿が見えなくなるまで見詰めた。
そうして、河川敷の傍で息を潜めていた、もう1人のフェイに視線を向けては名前を呼んだ。

“フェイ？”

びくりと、肩が揺れる。

柱の影から、ゆらりと現れたフェイの目元は赤く腫れて、悲しみに揺らいだ瞳でAを見詰める。

「A……」

震える声で名前を呼べば、不思議そうなAはふわりと浮いては、真っ直ぐにフェイの元へ舞い降りる。

「ここでは飛んじゃダメだって言ってるのに」

フェイの説教なんてお構い無しなAは、何かを察しては瞳を伏せ、もう一度目が合う時にはその赤い瞳が真っ赤に揺れていた。

“皇帝からの命令？”

ㅤ