ドナドナ (ページ47)

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第2期番外編1 「血濡れし戦い」ページ47

ＸＸ8年、吹雪の舞う冬のことだった。

これは英雄の生みの親、カイルの壮絶な戦いの一部始終である。

「よぉ、カイル。まぁた俺らに挑みに来たのかァ？低俗な牛よォ」
闘牛カイルの周りには、顔を隠しダガーや鞭などを持った男達が屯っている。
カイルは高揚したまま地を蹴り雄叫びをあげた。
それに合わせて、しんしんと雪の積もり続ける路地裏は試合開始を意味するように震えた。
これは、彼の魂の雄叫びだった。

彼には、愛する妻と息子がいた。それをこの男達に肉体的に、そして精神的に痛めつけられ、侮辱されたのだ。
その時から彼は家族のために、父としてこの男達と闘うために命をかけようと心に決めたのだ。

「オォオオオオ！！！」
カイルは男らに向けて走り出した。彼の周りには殺気と威圧感がこれでもかと溢れている。
「ヘェ、なかなかじゃねぇの？」男は鞭を地に打ち付けた。地がまた轟く。

それが、両者の試合開始の合図だった。

立ち向かうカイルを見て、男はなぜだか分からないが少し悲しげな顔をした。
「オォオオオオ！！！」カイルは、そんな顔に気づくはずもなく真っ白い雪を蹴散らし、必死に闘うのだった。

ただ、家族のために。息子の未来のために。

白い雪に、鮮血が舞う。紅くて、とても綺麗な。

青く淡い光を放つ月は、それを鮮やかに映し出した。

番外編2「彼の覚悟」に続く