ドナドナ (ページ24)

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番外編2「英雄と戦った戦友」ページ24

時は遡り、旧友ガイウスと戦った時の話である。ガイウスは「英雄」が暴れ出し、脱走し、人間が混乱しているすきを見逃さなかった。ガイウスは知っていた。「英雄」の目的を。だが、ガイウスは知っていた。人間が我々を従える武器は鞭だけではないことを。そう、人間は「銃」と呼ばれる短い杖を持っており、それから発する轟音、飛び出る得体の知れない何か。そして、激痛、悲鳴、出血、絶命。ガイウスは知っていた。「英雄」が「英雄」と呼ばれる前のこの闘牛場は、闘牛場(こんな場所)では無かったことを。

〜回想〜

ガイウスが子牛だった頃の話である。まだ、闘牛ではなく、荒野でのびのびと暮らしていたある日、それは訪れた。
仲間の牛「やめろ！やめてくれ！」
突如人間はこの広大に広がる世界を、我々から奪った。我々にはわからなかった。何が目的なのか。我々は何も出来なかった。逃げること以外。逃げた。我々は曲がることを得意としない。真っ直ぐ、ただ、前にしか逃げることが出来なかった。それで十分だった。人間の投げる縄は、ここまで届かないのである。そう思っていた。突如、構えが変わった。縄をしまったのである。仲間のロックスが話しかけてきた。ロックスは年齢差のある兄貴分だ。
ロックス「かなり離れてきたぞ！縄もしまわれた！逃げ切れるぞ！」
ガイウス「ああ。このまままっすぐ行けば、入り組んだ岩場が広がっている。俺たちの知っている道のとおりに行けば、抜けられるぞ！」
バーン!!!!!
ガイウス「なんの音だ！？」
その時である。誰かが倒れたことに気づいたのは。
ガイウス「え？」
一緒走っていたはずのロックスが倒れたのである。
転んだのだろうか。すぐさま駆け寄る。
ガイウス「おいおい。何コケてんだよ。」
ロックス「ギャぁぁぁぁぁ!!!!!」
ガイウス「ど、どうした！？」
ロックス「逃げろ…足が、足が、うわぁぁぁ!!!!!」
何を言っている？そう思いながら足を見た。
ガイウス「な、なんだこれは？」
溢れ出る、血、血、血。歓喜が、絶望に変わった。逃げなければ。だが、足がすくむ。その時だ。
バーン!!!!!
ガイウス「ぐわぁぁぁ！」
二回目の轟音。そして、背中への激痛。止まらない血。仲間に置いていかれる恐怖。動けない。助けてくれ。その思いは、悲鳴にかき消される。
人間「ちっ。捕えられたのは、2匹だけか。しかも、一匹は子牛かよ。しかし、凄いもんだな、銃は。こんなに離れていても、一撃で仕留められるとはな。よし、運ぶぞ！」