Q5:ほろ甘い ページ6
赤司side.
休憩に入り、1人で練習していると、「このいちごミルクうまっ!いちごと砂糖に牛乳のバランスがめっちゃ良い!」と声が聞こえてきた。
ふと顔をそちらに向けると、その声のせいか、あっという間に人だかりができていた。
「お、落ち着いて……イタッ。全員分あるから……」
その中心にいたのは、茶髪のセミロング……。
朝に言われた「如月先輩」だった。
俺はバスケットボールから離れて、その輪の方に行く。
「……全員そこから離れろ。如月先輩が苦しんでいるだろう」
俺がそう呟くと、あっという間にその輪が崩れる。
「わっ!?」
如月先輩はボトルをしっかり抱きしめたまま、倒れてくる。
どうやら、大勢に囲まれて既にバランスを崩していたようだが……。
俺は彼女の体を支えると、「大丈夫ですか?」と声をかけた。
「あ……ありがとう……ごめんね?えっと……赤司くん……だったよね?はい、これ君のボトル」
如月先輩はそう言うと、俺から離れてボトルを押し付けてくる。
俺が受け取ると、新たなボトルを掲げて「全員分あるから、まずは並んでくれる〜!?」
と声を上げた。
その声に素直に並ぶチームメイト達。
(なんだ。これは?何かが気に入らない……)
俺はその気持ちに首を傾げる。
いつの間にいたのか、キャプテンが「あいつはいつもだから気にするな」と声をかけてきた。
「……何がですか?」
俺は嘘偽りなくそう返す。
キャプテンは困ったように笑うと、如月先輩に顔を向けてしまった。
「あいつ……人当たりは良いんだ。そのくせ、可愛いもんと子供に目がない。今日のいちごミルクを差し入れしたの、きっと食用フラワーかなんかで、サクラも入ってるからなんだろうよ」
キャプテンはそれだけを言うと、ジュースを飲みながら離れていく。
(桜か……春らしいな)
俺はそう思いながらボトルに口を付けると、いちごの甘酸っぱさとは別に、ほろ甘いような風味が口に拡がった。
(……それにしても、これは今日だけなんだろうか……)
そう思うと、非常にやるせなくなり、俺はキャプテンの方に向かった。
「キャプテン」
「ん?どうした?」
「少しお話が……」
俺がそう切り出すと、キャプテンは「じゃあ、練習が終わったら何か食いにでも行くか」と切り出した。
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作者名:アマユリ | 作成日時:2021年11月20日 16時