Q45:嗚咽 ページ46
『……私の家……簡単に言うと、成金でさ……。って言っても小学校からだけど……』
「小学校から？」
『うん。だからかな。その頃から、両親が家にいたことはないの』
そう言う彼女の声が小さくなる。
小学校から両親は家にいないんだ。
どんなに寂しいか……。
俺はかける言葉を探しながら、椅子に座る。
『……私……大きい家とかいらない……』
「如月さん？」
急に変わった如月さんの声に、俺は携帯越しに焦ってしまう。
耳を澄ますと、泣いているのか、嗚咽の音が聞こえてくる。
『小さくて良い……祖母の家のように……狭くても良いの……家族の時間があれば、それで……』
俺は小さく息を吐いた。
今すぐにでも如月さんの家に戻って、そばにいき、抱きしめたい。
だが、厳格な父が俺にはいる。
(こういうとき、そばの家ではないことと、俺が知らないとこで泣かれるのは堪えるな)
「……如月さん。泣き止んでください。俺はそばに行きたくても、行けませんよ？」
『来なくて良い……こんな姿……見られたくない……』
如月さんはそう言うと、声を殺してしまう。
俺は、電話越しにただ如月さんのそんな声を聞くことしかできずにいた。
その間に俺は思う。
どれだけ、如月さんは寂しい思いをしたんだ……と。
(小学校といえば、まだ親が恋しい時期だ。俺も人のことは言えないが、それでも父が家にいない間は母がそばにいてくれた。だが、如月さんはそれが叶わず、現在に至っている)
俺は小さく息を吐く。
そして……無意識にも写真へ目がいった。
(こんなに眩しく笑う少女が、溜まりに溜まったもので、大雨を降らすのか……)
俺はそう呟くのと同時に、1つの決意を誓った。
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作者名：アマユリ | 作成日時：2021年11月20日 16時
