Q40:アルバム ページ41
「……どういうことだ?」
しばらくして、虹村くんはそう口にする。
私は虹村くんのそばに座り、事情を説明した。
「……なるほどな……副キャプテンはあくまでも、新入生が不安がんないための肩書きだし……」
「でしょ?なら、副キャプテン交代って方が良くない?」
「……わかった。それなら赤司を候補者に、様子見るか」
「うん」
私が頷くと、虹村くんは私の頭に手を乗せる。
それは小さい頃の、虹村くんのクセだ。
私が何かやると、親の代わりに褒めてくれる。
大きくなった今は、気恥ずかしくて、落ち着かないけど……それでも私は虹村くんにやめてほしいとは言えない。
「……来たついでだし、如月には言っとくか」
不意に、虹村くんが肩を竦めて呟いた。
その原因は、予想がつく。
虹村くんのお父さんの件だ。
「……よく、ならないんだね……」
「ああ……。だから、来年。大きい病院に転移させるかって話になっててな」
「来年?転移って……」
「安心しろ。全中が始まるまではたぶん、いられる。そこでだ。ゆくゆくは赤司をキャプテンにしようと思う。如月は……赤司の仕事をサポートしてやってくれるか?」
「……」
虹村くんの言葉に、私は驚いた。
虹村くんは、赤司くんを副主将で収める気なんてない。
自分がいなくなったあとの、チーム力が落ちないよう……より士気をあげる人がほしいんだ。
「如月」
「……虹村くんが抜けたあと、士気が落ちたらチームの雰囲気も悪くなっちゃうもんね。……わかった。どこまで、私にできるかわからないけど……やってみるよ」
私が大きく頷くと、虹村くんは小さく笑う。
「頼むな。マネージャー」
「うん。たまには写真送るよ」
「お、良いな!って、まだいなくなんねぇって」
「ふふっ。わかってても……ね」
私はそう言って、アルバムを手にする。
そこには、母の字で"修造くんとAの成長記"とある。
私はそっとアルバムを捲った。
「……赤ん坊の俺と如月か」
「何度見ても、小さいよね」
「ああ。同じ病院で俺が数日早かったんだよな」
「うん。だから、引き取られたのも、虹村くんの方が早かったって」
「そうだな……」
「でも、全然覚えてないね。お互いに、赤ちゃんだし」
「そりゃそうだ。この頃のが記憶にあったら、怖いだろ」
虹村くんがそういう中、保育園の頃の写真が出た。
そこには、大好きだった白いうさぎのぬいぐるみがボロボロにされて、泣いている私がいる。
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作者名:アマユリ | 作成日時:2021年11月20日 16時