Q39:候補者 ページ40
けど、瞬間にピシッとデコピンをされた。
「お前のシケたツラを翌日に見るよりはマシだ。つか、俺はリビングにいるから、早く体を温め直してこい。部活のことで話があんだよ」
「部活？だから、こんな時間に、わざわざ？」
「……まぁな。男子の方の……空席だろ？先生に言う前に、お前の案を聞きたくてな。副主将候補のこと」
「あ……わかった。着替えと合わせて、30分は待って。好きな本、読んでても良いから」
「わかった。急に来たのに、悪いな」
「良いよ。助けてくれたし」
「……なら、言葉に甘える」
虹村くんはそう言うと、脱衣場から出ていく。
私はそれを見届けて、虹村くんのシャツを洗濯機に入れ、脱水と乾燥をセットに回した。
それから、私は浴室に戻って、タオルを外すと湯船に浸かった。
それにしても……と、私は考える。
「副主将候補か……」
虹村くんが引退したとき、少なくとも現副主将の人が、次期主将の立ち位置を約束される。
それはわかっていた。
けど、それだけの技量をこなせるスタミナや頭脳などが求められことも。
「スタミナはこれからにしても、頭脳は……赤司くん、かな？」
私は呟くと、湯船から出た。
そもそも虹村くんは何故、マネージャーである私に意見を求めるのだろう。
これは以前、聞いたことある。
『マネージャーとして、誰が次期主将の座に相応しいか。贔屓目とかなしで言ってくれる存在ってのを俺は……お前しか知らない』
「贔屓目……」
今、私が赤司くんの名前を出したら、贔屓なのでは？
確かに赤司くんは練習を頑張っている。
でも、私が知っているのは、あくまで"練習中の彼"だ。
なら、いざ試合になったときは？
仮に虹村くんが、怪我などでベンチに下がったとき、戦略を立てるのは？
ゲームメイクはどう運ぶ？
「あ……ダメだ」
私は着替え終えると、同時に呟き、脱衣場を出て、リビングに向かった。
確かに、赤司くんにはそつなくこなせる頭脳がある。
けど、それはあくまでも建て前。
虹村くんがコートにいなかった場合、どうなるかを私は知らない。
(明後日は私が見れる保証はない。なら、明日？いや、急すぎる。そもそも、期限は？)
そんなことを考えているうちに、リビングだ。
私は勢いそのままに扉を開けた。
バンッ
「虹村くん！副主将の件の期限っていつまで！？」
私が声を上げると、虹村くんは読んでいただろう本から、顔を上げて、固まってしまった。
※
設定に虹村くん、追加しました。
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作者名：アマユリ | 作成日時：2021年11月20日 16時
