Q38:幼馴染み ページ39
「私……好きな人ができたの。学年は私の1つ下。その人、部活も勉強もすっごく頑張っててね?私、その人を全力でサポートしたいって思うの。だから……お見合いはしたくない。1日でも、その人を見ていたい。部活の間でしか、会えないけど、この気持ちをまだ言う気はないけど、それでも」
『……何言ってるの?1つ下?後輩はダメよ。母さんが認めない。あなたは少なくとも、5つは上の人と結婚するの!勉強と部活を頑張ってる?後輩だからでしょ?あなたが名前を言えない人、母さんは』
そう捲し立てる母に、私は口を挟もうと、口を開く。
が、それよりも早く、声が響いた。
「"赤司征十郎"」
『えっ?』
私は携帯を手に、顔を上げる。
そこには、虹村くんの姿が。
「な……」
"なんで"
そう言おうとしても、私は驚きのあまり、声を出せない。
虹村くんは私の体を見てか、そばに来ると、シャツをかけてくれた。
そして、私の手から携帯を取り上げると、くるりと背を向けてしまう。
「もしもし。お電話変わりました、虹村です。ご無沙汰してます。いえ、こちらこそ。突然すみません、おばさん」
私はその光景を呆然と見つめているしか、できない。
虹村くんは、校門のところで私達と分かれて、先に帰ったはず。
じゃあ、目の前にいるのは?
目の前で電話しているのは?
この声で、その背中は?
保育園から、ずっと……。
ずっと見てきたから、間違えるはずがない……。
私が怒ったり、泣きたいときはそばにいてくれた幼馴染み……。
それからしばらくして、電話は終わったのか、虹村くんは「ええ。それじゃあ」と通話を切った。
そして、私を振り返る。
けど、その表情はムスッとしている。
「お前……俺が電話してる間に風呂入り直すとかくらいしろ。風邪引いたらどうすんだ!」
「ごめん……あまりにもショックで……」
私が呟くと、虹村くんは頭をガシガシと掻き、その場に座り込む。
「まぁな……けど、中2で見合いはねぇだろ。しかも、お前の誕生日に。毎年毎年……」
私はその言葉に苦笑を返した。
いつからだろう……。
父は、私のことで話さなくなり、母は私に「大きくなったときの結婚相手」とお見合い用の写真を大量に用意し始めたのは。
そのことを虹村くんに相談という形で話すと、虹村くんが誕生日当日、私を連れ出したのも多々ある。
「……子供の頃は、お前を引っ張り出すの簡単だったのにな」
「その度に2人で怒られたじゃない」
私が冗談めかして笑う。
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作者名:アマユリ | 作成日時:2021年11月20日 16時