Q37:お見合い ページ38
それから、赤司くんは荷物を手に、私の家から自宅に向かった。
お迎えは来ていたらしいけど、私は玄関先で赤司くんが見えなくなるのを見つめているだけ。
それから、中に戻り、今はお風呂タイムになっているわけだけど……。
「……明日……か。赤司くんへの気持ちに気づいたからと言って、今すぐにどうこうしたいって訳でもないし、そもそも彼と私じゃ……」
違いすぎる。
真っ当な正家と、成り上がりの家では、雲泥の差というものが出る。
赤司くんの家は世界有数のそれ。
私の家は少しずつ大きくなったから、根も葉もない噂が立てられた。
「噂のこと、赤司くんには知られたくない……」
私はキュッと自身の体を抱きしめる。
噂の中には、私に関するものもあり、その大半は私が"両親のために体を売った"というものだ。
虹村くんにはそのことで、心配されたが、嘘だとわかると、そのことに触れるのもやめ、元の"幼馴染み"という枠に戻った。
ピリリ
ふと、脱衣場に置いた携帯が鳴った。
私は小さく肩を揺らすも、タオルを体に巻いて脱衣場へ向かう。
携帯を手にして、相手を見ると、固まった。
そこには"お母さん"の文字。
私は深い深呼吸をして、電話に出た。
「もしもし?」
『あ、A?久しぶり!どう、学校は?』
「どうって……新入生が」
"入っただけで、変わらない"
その言葉には続かなかった。
というのも。
『あ〜!そうそう!あんた、明後日は空けときなさいよ!?学校も部活も休み!』
「えっ!?なんで!」
『お見合いよ。あんたぁ、いい加減に写真の中から男を決めなさいよ?恋愛なんて、ロクな事にならないんだからぁ』
母の言葉に、私はその場に座り込む。
おばあちゃんの話しでは、母は父と恋愛結婚をした。
そんな両親に憧れて、"私もいつかは"。
そんな夢を見ていたのに。
聞かされた言葉は、"お見合い"。
なんで……?
なんで、そうなの?
少なくとも、"前は"そうじゃなかった……。
私が"恋愛結婚したい"と言うと、"恋愛は大変だ"と笑ってでも許してくれた。
数年前のことだけど、それでもっ、こんなのはあんまりだ……!
『ちょっと、A〜?聞いてる〜?A〜?おーい』
突然私が黙ったせいか、母は電話越しに呼びかけてくる。
けど、私は悲しいのと、怒りとで、自分の心をうまく制御できない。
落ち着こうとするが、母がひっきりなしに私を呼ぶ。
(こんなの……落ち着く方が無理だ)
私はそう思うと、「母さん」と静かに呟いた。
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作者名:アマユリ | 作成日時:2021年11月20日 16時