Q13:第3体育館 ページ14
それから朝練を終えた俺達は、体育館の掃除を始めた。
「赤司くん。お疲れ様」
そう声をかけられて手を止めると、如月先輩じゃない人がいた。
「お疲れ様です。えっと……」
「霧ヶ咲 美桜。忘れないでよ」
「すみません……先輩ではキャプテンと如月先輩としかまだ話してないので……」
「昨日、少し話したじゃん」
「はぁ……(俺にとって、それは話してないのと同然なんだが……)」
「それよりさ。Aをマネージャーにする予定って本当?あの子はやめといた方が良いと思うけど……」
「何故です」
「何故って……あの子、卒業しちゃったけど、先輩の彼氏さんを取ったって噂になってたのよ?」
先輩の彼氏?
去年、卒業したという3年のことか?
いや、それとは別に、そんなこと俺には関係ないと思うが……。
「あいつは取ってない。先輩がしつこく言い寄って、適当な噂を流しただけだろ」
そう言ったのは、虹村キャプテンだった。
「混乱させるようなことを言って、後輩を困らせるな。赤司、ここは良いから、第3体育館の方を頼む。今日の放課後、女子がそこで練習試合すんだ」
虹村キャプテンはそう言いながら、俺のモップを手にする。
どうやら、ここは任せて行けってことだろう。
「わかりました。お願いします」
俺はそう呟くと第3体育館がある場所へと向かった。
第3体育館に来ると、如月先輩だけが中にいた。
「……如月先輩」
「!あ……赤司くん……どうしたの?」
俺が声をかけると、如月先輩の体が僅かに震えた。
「いえ。虹村キャプテンに、女子が今日、ここを使うからと……」
「あ……うん。毎年、お世話になってる学校でね。お互いまだ新入部員は入ってないけど、練習試合は組まれてるの」
「そうなんですか……」
俺はそう言いながら、中に入る。
中は少し暗いのか、それとも先輩が日陰にいるのか、どちらにしても、俺の位置では先輩の顔が見えないってのもあった。
が、先輩に手を伸ばせば届くかと言うところで、「そ、それ以上寄らないで」と言われた。
「先輩?」
「あはは。実は……さっきボールにつまずいて、転んじゃったんだ。そのときに足首を捻ったみたいで……」
「なら、見せてください」
俺はその場で膝をつくと、そう呟いた。
先輩は少し躊躇するような素振りをしたが、俺が「怪我が長引いて、納得のいかない試合結果になりますよ」と言ったら、痛めたという足を見せてくれた。
5人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:アマユリ | 作成日時:2021年11月20日 16時