コンバンワ、サヨウナラ ページ46
『死にたくなかったら黙って後ろを向け。』
「・・・ゴクッ」
ツンッと茂利の喉仏に剣先が当たるとチクリとした痛みが走り、薄く血が流れる。
催促させるかのように青白い光が細められるのを見ると茂利は両手を上げながらゆっくりと後ろをむいた。
茂利が後ろを向いたのを確認するとお面の者は刀をしまい、杏寿郎を見下ろした。
杏寿郎は懐かしい感覚に瞳を揺らして震える手で羽織に手を伸ばして力なく掴む。
「・・・姉、上?」
お面の者は何を言うでもなく掴まれた手を取り、ぎゅっと握り直すとそっと杏寿郎の頭に手を置いた。
『集中。見たところ、全集中の常中は出来ているな。破損した部分に意地でも集中し、止血するんだ。』
「っハ・・・クッ!」
杏寿郎は言われた通りに意識を集中させると額に汗を受けべながら止血に専念した。
血が止まった事を確認するとお面の者は頭をふわりと撫でた。
『そうだ、よく頑張ったな。』
「プハッ・・・ハァ・・・ハァ・・・。」
杏寿郎の容体が落ち着いたのを確認するとお面の者はおもむろに来ていた羽織を脱いで体を冷やさないように杏寿郎にかける。
『言い忘れていたが、私は【虚】・・・鬼だ。』
「鬼・・・何故、鬼である君が・・・俺を殺さない?」
『・・・頼まれたからだ、お前の姉に。』
「っ姉上だと!?・・・ーッ!」
虚の言葉に驚き勢いよく起き上がるが、急激に動いたため立ちくらみにやられる。
『真実を知りたくば強くなれ。』
「待ってくれっ!虚!姉上は元気なのか!?虚っ!」
しかしそんな杏寿郎の叫びも虚しく、虚は鈴の音を立ててその場から消えて行った。
「…っ!これは!」
杏寿郎が手に取ったのは、Aが身に付けていた朱雀の刺繍が施された羽織りだった。
「あぁー・・・俺の思いは、無駄じゃなかったっ!!」
その羽織をぎゅっと掴み抱き締めると、意識とは関係なく瞳が涙で濡れ、ポタポタと羽織を濡らした。
「姉上っ姉上ぇ・・・っ!」
「煉獄。」
そんな杏寿郎を見てこれから彼に訪れるだろう未来に茂利は胸を痛めた。
(なぁ、A・・・お前はこんな姿の弟を見るために鬼になったのか?
こんなにもお前を必要としてるのに、お前は本当・・・鬼より鬼らしい女だよ。)
茂利は空を睨み上げる様に見上げたのだった。
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あまね(プロフ) - 続き気になる! (9月29日 0時) (レス) @page50 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
ぴーたん(プロフ) - meさん» いつも読んでくださりありがとうございますっ!!少しずつですが完結まで頑張っていこうと思います! (2020年10月22日 15時) (レス) id: 3f898f19d6 (このIDを非表示/違反報告)
me(プロフ) - 右の星を押したら既に投票済みでした..いつも楽しく読ませてもらってます!続きもがんばってください! (2020年10月22日 12時) (レス) id: 47178bfabc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴーたん | 作成日時:2020年5月13日 14時