しゃちょーさん宅の専務さん

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多分、あの時はじめは本気で俺に殺気を立てていた。


それがネタだと分かったのは日本一のクリエイターとしての経験則と観察眼、そして、ネタであって欲しいという願望だったんじゃないか？




そんな考えを心の中に閉じ込めて、先程の映像を編集中の彼女の後ろ姿に伝えるのは




｢水琴、はじめの下りは映り悪かったから使わなくていいと思う、畑メンツのだけでも十分面白かったし｣

『でもそうすると動画の締めが…』

｢よーへーくんの勘弁してー、みたいなセリフあったやん？それでいーんじゃない？｣

『？分かった』




分かってなさそうなこいつに、聞かれないよう小さくため息。



水琴、お前はどれだけ周りを振り回すんだ？



あのはじめに違和感しか感じないって、鈍すぎねぇ？



この企画持ってこられた時、俺はすごい嬉しかったんだよ？
俺を共犯者に選んだってことは少しは期待しちゃうじゃん。



あの時のあの視線、あれは完全に“はじめしゃちょー”じゃなくて“江田元”だったじゃん。



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まだ手に入らない専務さんや。

今はまだ言わない、言えないから、もう少し待ってて。

もし俺を選ばなかったとしても、頼むから、もう少しだけでも誰かひとりのものにはならないで。



まだ、俺らを振り回す一羽の蝶でいて、なんて。




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