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kn視点
シャオロンの目を掻い潜ってリビングから抜け出すと、俺が一人で向かった先はトイレじゃなくてAの部屋や。
Aを起こしてしまわへんように静かにAの部屋のドアを開けて、音を立てずに入って行くとベッドで魘されてるAの姿があった。
「…お父さん、お母さん」と、涙を流しながら両親を呼んでるA。
Aの両親は別れを惜しまれているだけあって、良い両親やったんやろうなと勝手に想像してしまう。
俺は両親との良い思い出はほとんど無いから、正直俺からしたら羨ましい。
Aが見てる夢は良い夢では無さそうやなと思って、Aを起こしてしまわへんようにAの涙を服の袖で拭ってやりAの手をそっと握った。
俺にとって女は嫌いな部類の存在や。
香水と化粧の匂いも嫌いやし、俺に近付いてくるのは地位や顔や財産が目当てのろくでもない女ばっかりやった。
せやけどAは、今まで近寄ってきた女たちとは違った。
ほんまはAなりの目的があったけど、全く聞いたことがない国からやって来た俺の手当をしてくれた上にW国に帰れるまで俺たちの面倒見てくれとる。俺やったら確実に見捨ててる。
Aはゾムに殺されかけて怖い思いをしても、俺たちを突き放さんと迎え入れてくれた。
俺は良く周りから心が無いって言われるから大先生辺りにはめちゃくちゃ驚かれるかもしれんけど、Aと一緒に過ごしているうちに俺はいつの間にかAのことが好きになっとった。
俺は好きじゃなかったらAのことを抱きしめたりせんし、Aの手も今こうして握ったりなんかせん。
いつもAがドライヤーで俺の髪を乾かしてくれるのも普段はオカンって呼んで揶揄ってるけど、そのやり取りさえも愛おしく思えてくる。
kn「あー…。Aに好きって簡単に言えたら苦労せんのやけどな…」
もし恋愛経験豊富な大先生が俺の立場やったら、Aに何て言うやろうか。
昨日思わず、Aに『仕事辞めて、W国でAとずっと一緒に居れたらええのに』って口走ってしもたのも、W国に帰ることになったらこのままAと離れてしまいたく無いからや。
お互いの本来の生活があるからAの合意さえ取れてしもたら、W国に帰れる時が来たらそのままAを連れ去ってしまうんやけどな。
kn「…早くAの体調が良くなるとええのになぁ」
俺は静かにそう呟くと、Aの唇にそっとキスを落とした。
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