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コネシマさんたちに明日食べて貰う分のご飯を作っていると、鬱さんがそろりとリビングに入って来た。
「鬱さん、どうしたんですか?」
「あ、Aちゃん。バレてしもた?」と言って、私に気付かれた鬱さんはこちらに近寄ってきた。
「足音でバレバレですよ。鬱さん、眠れないんですか?」
「まぁ、そんなところかな。枕が変わると、寝れへんねん」と鬱さんがへらりと笑った。
ut「…あのさAちゃんのこと、正直言うと僕まだいまいち信用出来ひんねん。一体どうやってシッマとゾムの二人を懐柔させたん?」
どうやら、私は鬱さんに信用されていなかったようだ。だからパーソナルスペースに踏み込んで、信用に値する人間がどうか見られていたのかと思うとなんだか腑に落ちた。
「懐柔って言われても…別に特別なことをした訳ではないですよ。W国に帰れるまでの間、衣食住を提供しているだけです」
ut「ふーん、Aちゃんのこと信用して良いんやんな?」
「勿論です。信用に値しない人間だったら、ゾムさんにナイフで既に殺されていますから」
ut「あー…、シッマとゾムが同じこと言ってたわ」
「鬱さん、これどうぞ」と言って、鬱さんにマグカップを渡す。
「ホットミルクです。蜂蜜を少し入れたので飲みやすいと思いますよ」
ut「何で僕にこれを?」
「鬱さん、さっき眠れないって言ってたので。ホットミルクで体を温めると良いですよ」
鬱さんは私が差し出したホットミルクを受け取ると、ちびちびと飲み始めた。
ut「Aちゃんは変わっとるなぁ」
「私からしたら皆さんの方が個性的だと思いますけど」
ut「…Aちゃん、やっぱり鬱くんって呼んでくれへん?」
「嫌です」と私は即答した。それはそれ、これはこれ。
「Aちゃん、ホットミルクご馳走様。ちょっと眠くなってきたわ」と言って、鬱さんは欠伸をした。
「もう飲んだんですか?早いですね」
鬱さんから中身が空になったマグカップを受け取る。
ut「Aちゃん。まだ寝ぇへんの?何か手伝おうか?」
「あともう少ししたら終わるので大丈夫ですよ。鬱さん、先に寝ていて下さい」
ut「ごめんな、力になれんくて」
「気にしないでください。ほら鬱さん、早く寝てください」
ut「おやすみ、Aちゃん」
「おやすみなさい、鬱さん」と言うと、鬱さんはコネシマさんたちが眠っている部屋へと戻って行った。
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