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夕飯を済ませると、コネシマさんにお風呂に入って貰っている間に私は食器を洗い始めた。
「ゾムさん、食事はお口に合いましたか？」
zm「…まぁまぁやな」
「…そうですか」
未だに警戒心が解けていないゾムさんとの、二人きりの空間は正直に言うと苦痛でしかない。
いざ歩み寄ろうとしても、ゾムさんと会話のキャッチボールが全くと言って続かないのだ。
コネシマさん、早くお風呂から戻って来てくれないだろうか。
zm「…なぁ、シッマの恩人」
話題を何かしら提供せねばと脳をフル回転させていると、沈黙を破り話題を振ってきたのは意外にもゾムさんからだった。
「ゾムさん、どうしました？」と返すと「あー」「うー」と言って、ゾムさんはしどろもどろ何かを言いたげな様子である。
zm「…さっきのメシ美味かったで、ありがとうな。あと、さっきはナイフで殺ろうとしてすまんかった！」
頭を下げて謝ってくるゾムさんに驚きのあまり思わず目を見開いてしまう。
ゾムさんには失礼かもしれないが警戒が解けたら、人はこんなに変わるのか。
いや、ゾムさん本来の性格がこちらなのだろうが。
「ゾムさんのお口に合ったみたいで良かったです。見ず知らずの人を警戒するのは当たり前ですし、私は気にしていませんよ」
ごめんなさい、嘘です。命が懸かっていたので物凄く怖かったです、と心の中でゾムさんに平謝りをする。
「それにコネシマさんの仲間の方は良い人ばかりと聞いていたので」と付け加えると、ゾムさんは安堵したようで「ありがとうな」とお礼を言った。
そしてゾムさんは今まで頑なに外さなかったパーカーのフードをぱさりと外した。
フードで隠れていたはずのコネシマさんと同様に整った顔、茶色の髪、ペリドットの瞳が露わになる。
zm「なあ、Aって呼んでもええ？」
「良いですよ、どうぞお好きに呼んでください」
zm「改めて俺はゾム、W国の幹部で暗殺部隊に所属しとるで。よろしくな、A！」
「ゾムさん、こちらこそよろしくお願いします」
ゾムさんが暗殺を得意とするなら一歩間違えていれば私は容易く殺されてたのだろう。そう思うと、身体が完全に安心しきったのか腰が抜けた。
「ゾムさん」
zm「なんや？」
「…腰が抜けました」
「Aはヤワやなぁ」と言って、コネシマさん以上に警戒心が強いゾムさんが私と会話をして初めて笑った瞬間だった。
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