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いつも通り仕事を淡々とこなす。
やがて定時を迎えると、周りの同僚や先輩と後輩達がいそいそと退社し始めだす。
今日の分の仕事にキリがついたので、帰宅ラッシュの波に乗ってそろそろ帰ろうかと思い、私も帰る準備を始めた。
しかし、悲しいことに私が退社することを邪魔してくる人物がいる。そう、クソ上司の存在だ。
「田中さん、これも追加でよろしく。明日の朝一で使う資料だから」と上司から新しい仕事が振られる。
定時に明日の朝一で必要な仕事を振ってくるのはいかがなものだろうか。相変わらずの無理難題に頭を抱える。
今月何度目の居残り残業なのかを指折り数えるのを止めると、一瞬で増えた書類の山とパソコンのモニター画面を交互に睨めっこする。
もちろん上司は仕事を私に振ると、そそくさと退社していった。
現在時刻は午後十時。
無事に残業を終えて、退勤カードを押して会社を出た。
電車に乗り、数駅で最寄り駅に着く。
電車から降りるとヒールをカツカツと鳴らしながら、家までの帰り道にあるコンビニへと直行する。
そしてビールと肴を購入し仕事のストレスを酒で発散するべく歩く速度を上げ家へと向かうと、私の家の前に怪しい人影が見えた。
こんな夜遅い時間なので不審者の類だろうか、と胸がざわつく。
「あの…私の家に何か用ですか？」とおそるおそる声を掛けてみる。
？「いや、そういう訳やあらへんのやけど…」
金色の髪にスカイブルーの瞳の男の人が、私の家の前に座り込んでいた。
この男性が、先程見かけた人影の正体だったようだ。
この辺りではなかなかお目に掛かれない、西洋を思わせる容姿とは異なり随分と関西弁が堪能な人だ。
顔が良いなとぼんやり観察していると「なあ」と、物凄く無愛想な表情で声を掛けられた。
「何でしょうか？」
？「一体ここはどこや？W国に戻りたいねんけど」
「W国？ここは東京ですけど…」
？「トウキョー？聞いた事ないわ、そんな所」
私は思わず「えっ」と声を漏らしてしまう。彼は一体、W国という国からどのようにしてやって来たのだろうか。
W国なんて国の名前は聞いたことがない。
やっぱり新手の不審者かと思い、警察を呼んだ方が良いのだろうか。
でも私は何故か、彼が冗談を言っているようには思えなかった。
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