男装生活とその日常について３ (ページ46)

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「手首、跡着いてるぞ」

「隠すのは得意だからね、平気だよ」

「……お前本当は全然大丈夫じゃないだろ、相当怖かったんじゃないか？」

「……なんで？」

「わかるよ、何年お前に付き合ってると思ってるんだ」

そう言って目を見ると、Aが息を飲み込んだ。

逆に何で解らないと思うんだ。

いくら握り返しても暖かくならない手のひらだって、いつもよりよく回る口だって、外から聞こえる小さい物音に反応して揺れる肩だって、どこを見れば良いのかわからないように動く瞳だって。

どこをどう切り取ってもおかしいんだ。

気付かないわけがない。

この期に及んでAは悟られていないとでも思いこんでいるのだろうか。

「なあ、怖いなら素直にそう言ってくれ。お前だって男だから言いたくないのかもしれないけど、言ってくれなきゃオレの方が不安なんだよ」

下ろした手の指先を握ると、Aがまた申し訳なさそうに顔を歪めて笑みを作った。

「心配かけてごめんね、スンチョル」

放っておきたくても、そんなこと出来ないほど弱った顔をするのに、Aは頑なにオレを突き放す。

オレがどんな言葉を伝えても、Aに届かない気さえした。

今は何を言ってもダメなんだろう。でも、それじゃあいつになったら良くなるんだ？

「……もう一人で出歩くなよ」

「そうする」

「会社とか作業室に行くのも、買い物に行くのも、全部だぞ」

「う、うん……」

「前々から言おうと思ってたけど散歩とかも一人で行くな」

「それも？」

「A」

「わかりました」

Aが目を伏せて、少しだけ拗ねたように口を突き出した。

もうどこに何があるか解らない。

他のメンバーだってそうだけど、Aは特に細いし、力も無い。

ふとした瞬間、女に見えることもある。

まあ、ハニほどではないけど……

「お前よく逃げ出せたな」

「それがさぁ、直前までジュニと拳法の話してたんだよね」

「はあ？」

「で、やっぱり急所は積極的に狙っていこうって」

「お前たちはいつも何の話を……」

「そう思うとジュニは命の恩人なんだよね、ジュニのこと師範って呼ぼうかな」

「……お前がそうやって明るく振る舞おうとすればするほどオレは寿命は縮むよ」

「だから来てほしくなかったのに」

そう言ってぎこちなくAが笑う。

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