男装生活とその日常について３ (ページ42)

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襲う？男が男を？

いや、そもそもなんでAが襲われなきゃいけないんだ。

ジュンは仕事の話だなんだと言っていたけど騙されたのか。

Aは大丈夫なのか。

未遂って言ったって襲われたことには変わらない。

いったい何がどうなってる。

頭の中を混乱状態に落としたままエレベーターに乗り込めば、どんどんと階を登っていく。

急いだところでエレベーターの速度が変わる訳じゃないのに、気が急って靴底を踏み鳴らしてしまう。

ドアが開いた先にはオレ達の視線を伺うようにおどおどした女の人が「こちらです」と言って背中を向けた。小走りでついていく。

奥の行き止まりで「失礼します」と、その女の人が重そうな会議室の扉を開けた。

一番最初に目に飛び込んできたのは頭を下げるスーツを着た偉そうな人達。

その次に、手前に座っていたAが振り向いたのが見えた。

決まりの悪い顔をしてオレに片手を上げる。

SC「お前……！」

＿「スンチョル、ごめんね。大丈夫だから、ごめん」

SC「襲われたって、本当なのかよ！」

＿「うん、でも何ともないよ。むしろオレが急所を強く蹴りすぎちゃって……」

SC「そういう事じゃないだろ！」

＿「ごめんね、心配かけたね、ごめんなさい」

Aの上げていた手を掴むと、緩んだシャツの袖から細い手首が露出する。

何が未遂だ、何が大丈夫だ、そんなの全部大ウソじゃないか。

手首についた指の痣がうっすらと紫色になっている。

途端に眉間の皺が深くなる。

きっとオレは今、目の前にいる自分より遥かに偉い人たちを睨みつけてしまっているだろうな。

だけど、それこそ何の問題もない。

Aに向かって頭を下げていたという事は、この人たちか、それともこの人達の部下に当たる人間がAを襲ったって事なんだろ？

腸が煮えくり返るって言うのはきっと、こういう事を言うんだ。

そう思いながら前を見据える。

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