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Aが双子の片割れだったお姉さんの話をする時、意外にも悲壮感らしきものは一切漂わない。



むしろこっちがヒヤヒヤするくらい小馬鹿に言って見せることもある。

今回はそれがシュアヒョンの逆鱗に触れたんだ。



Aのそういう考えを肯定しないシュアヒョンの気持ちは痛いほど分かる。

死者に対して余りにもフランクなその態度は「もしかしてAのお姉さんは生きているんじゃないか?」と疑ってしまうくらいなのだ。




僕たちだって、仲が良いとか悪いとか、そんな簡単な話じゃないことは解っている。

同じ胎内で育った、血を半分に分けた姉と弟だ。


Aがやけにお姉さんの事を辛辣に言う理由は、いったいどこから来ているのだろうか。





「お姉さんどんな人だったの?」

「言わなかったっけ?」

「聞いたよ。頭はそんなに良くなくて、怖がりで、ネガティブで、どんくさい人」

「ひどいな」

「全部Aが言ったんでしょ?」

「そうだったね」





腕を伸ばしてソファにのけぞりながらAが笑う。

うーん、シュアヒョン。
残念ながら反省の欠片さえ見えません。



そんな事をヒョンにテレパシーで送っていると、Aがまたどこか他人事のように呟いた。





「オレの……Aの姉、あの人って本当に運が良いのか悪いのか……」

「……良くは、ないんじゃない?」

「そうなんだろうね、でも最近はそうとも思えなくなってきちゃって」

「どうして?」

「幸せそうだから」





天井を見上げながら、僕ではない誰かに向けてAがそう答えた。



Aの言う「幸せそう」とは一体誰の事を指しているんだろう。

会話の流れからすればAのお姉さんだけど、その人はもうこの世に存在しない。



もしかして幽霊でも見えてる?
お姉さんの?幸せそうなお姉さんの幽霊……?



いやいや、Aは根本的にそういう類の話は興味の範囲外に追いやっている。
この人は宇宙人すら信じてない。




とりあえず話の続きを静かに待ってみたけど、ひどく曖昧な言葉の意図は僕に伝える気が無いらしい。

会話をやめた部屋には機械の起動音だけが響いている。


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せの(プロフ) - ちょんちょんささん» ありがとうございます! (2019年6月6日 10時) (レス) id: ce3e37b412 (このIDを非表示/違反報告)
ちょんちょんさ(プロフ) - このお話がとても大好きです!!続編も楽しみにしてます^ ^ (2019年6月4日 11時) (レス) id: bf015467db (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - うゆさん» ありがとうございます! (2019年6月3日 10時) (レス) id: ce3e37b412 (このIDを非表示/違反報告)
うゆ(プロフ) - 更新ありがとうございます!毎話毎話、素敵すぎて心がぎゅーっとなります( ; ; )そのままずっといっしょに幸せに暮らしてくれーーーーー( ;∀;) (2019年6月1日 15時) (レス) id: 81aa380229 (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - ゆかさん» ありがとうございます! (2019年5月31日 16時) (レス) id: ce3e37b412 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:せの | 作成日時:2019年5月20日 10時

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