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沈黙が続くと居たたまれなくなる。
まずい、どうやら本格的に選択肢を間違えてしまったらしい。
ひえっ……、温厚を絵に書いたようなAヒョンを怒らせるなんて初めてだから対処法が解らない。
キムミンギュなら、キムミンギュの対処法なら嫌というほどわかるのに……!
ミンギュヒョンの白い歯を零した笑顔が、走馬灯のように頭の中を横切っていく。
一歩近づいてきたAヒョンに「あれ、もしかして暴力に傾く系?」と怖気づいて目をつむれば、想像していたよりも小さな衝撃と、温かい感触が僕を包んだ。
「馬鹿な子」
ふわりと、Aヒョンの少しだけ甘い香りが僕の周りに広がる。
どさりと、何かが落ちた音がした。
それが、今まで大事に大事に抱えてきた保冷バッグだと気付くのに、相当の時間を費やしてしまったのはしょうがない事だと思う。
……あの、Aヒョンが、
あの、自分からはめったにスキンシップを取らないAヒョンが……!
自分から肩を組みに行くのも年に数回あるかどうかのヒョンが……!
よもやステージ外で、僕を抱きしめる日が来るなんて夢にも思わなかった……!!
わあ、大事件だ……。
驚きのあまり自然に開いた口を手で覆う。
もしやドッキリを仕掛けられている……?
四方をキョロキョロ睨みつけてカメラを探すけど見つからない。
誰の作為もなく、誰の目も無く、いつもと変わらない宿舎の玄関で、確かに重大な事件が起きていた。
このAヒョン。
周りからの接触を受け入れることは多いけれど、自分から行くことはほとんどない。
ファンサービスの一環だと誰かが口を酸っぱく言っても、ステージの上ですら積極的に自分からメンバーと触れ合うことないのだ。
まあ基本的に手を拒むこともないので、メンバーのおもちゃになってることも多いけれど……
けれど、それとこれとは大違いだ。
一気に頭が真っ白になる。
落ち着こう、落ち着こう、僕。
冷静になろうと考えれば考えるほど、Aヒョンから漂う甘い匂いに脳が支配される。
シャンプーや洗濯物の匂いじゃないな、入浴剤の匂いだろうか?
僕より少しだけ長い髪の毛が濡れているから、朝風呂でも決め込んでいたのだろうか。
もしかしたらAヒョンは、宣言通り本当に優雅な一人暮らしを満喫していたのかもしれない。
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せの(プロフ) - ちょんちょんささん» ありがとうございます! (2019年6月6日 10時) (レス) id: ce3e37b412 (このIDを非表示/違反報告)
ちょんちょんさ(プロフ) - このお話がとても大好きです!!続編も楽しみにしてます^ ^ (2019年6月4日 11時) (レス) id: bf015467db (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - うゆさん» ありがとうございます! (2019年6月3日 10時) (レス) id: ce3e37b412 (このIDを非表示/違反報告)
うゆ(プロフ) - 更新ありがとうございます!毎話毎話、素敵すぎて心がぎゅーっとなります( ; ; )そのままずっといっしょに幸せに暮らしてくれーーーーー( ;∀;) (2019年6月1日 15時) (レス) id: 81aa380229 (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - ゆかさん» ありがとうございます! (2019年5月31日 16時) (レス) id: ce3e37b412 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:せの | 作成日時:2019年5月20日 10時