40 ページ41
約半年ぶりに会った両親は、心なしか少しやつれて見えた。
私を見るなり抱きしめられて、ぽろぽろと落ちる涙で母が泣いているのだと分かる。
両親の声も、もちろん私には聞こえない。
アプリを見続けなければいけないから、目を見て話すこともできない。
両親と兄が交わすテンポの良い会話を聞きながら、耳が聞こえないのはこんなにも不便で、寂しいことなのだと思い知る。
だんだん聞こえにくくなるわけでもなく、突然音を聞くことができなくなってしまった私。
音のない世界で、これから先の見えない日々を生きていくのだと思うと辛かった。
【ご飯、食べに行こうか。ジウナ。】
“うん。”
自分が発した声でさえ、文字を見てから初めて正しいかどうかわかる。
大切な人たちの声は、私にだけ届かない。
1日休みを取ったという兄と、久しぶりに家族4人で過ごした。
ご飯を食べ、ソウル市内を巡った。
一年以上ソウルに住んでいても何もわからない私と、両親。
案内をしていた兄は慣れていないのかぎこちなくて、さながら新人ガイドのようだった。
夕食の際、私は両親に練習生を辞める旨を伝えた。
初めこそ心配して、励まそうとしてくれた両親だったが、私の意思が曲がらないことは身にしみてわかっているためか、早々に諦め釜山に戻ることを許可してくれた。
とはいえ、今すぐ釜山に戻るというわけには行かない。
まずは会社とも話し合わなければいけないし、学校にも転校させてほしいと申し出なければならないだろう。
両親はホテルに泊まり、やることが終わってから私と釜山に戻るつもりのようだった。
そこで私も宿舎に戻ることとなったのだが。
【どれだけ心配したと思ってんの？馬鹿じゃないのほんと】
先ほどから、カトクを見て駆けつけたジヨンはじめとする同期たちにお小言を受けていた。
宿舎に帰る前に会社に荷物を取りに来て、捕まってしまったのだ。
“私、一応病人。”
自虐か、と呆れられるような理由で抜け出そうにも、画面には怒涛の文字が浮かび上がる。
もはや誰が話しているのかわからないし、それぞれの声が混ざってしまって言語として成立しない文法が出来上がってしまっていた。
しまいには私が辞めることを知った同期たちに、涙ながらに別れを告げられる。
それで私も別れと、夢を諦めてしまったと再三実感し、泣いてしまったのだからやはり類は友を呼ぶ。
結局、解放されたのは夜12時前だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 733人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「SEVENTEEN」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
千笑 - お待たせいたしました。更新を再開させていただきます。 (2023年1月9日 13時) (
レス) id: 6154d9208d (このIDを非表示/違反報告)
千笑 - いつも小説を楽しんでいただいてる皆様へ。作者の千笑です。私情により、ログインすることができなくなってしまったため、長期間更新ができないかもしれません。申し訳ありません。状況が改善した時にまたお伝えします。 (2022年12月28日 21時) (レス) id: 6154d9208d (このIDを非表示/違反報告)
Kokuma(プロフ) - めちゃめちゃ好みです！続きが楽しみです。 (2022年12月17日 21時) (レス) id: 9eeff62ceb (このIDを非表示/違反報告)
こまり(プロフ) - まさかの展開すぎてびっくりしてます。続き気になります！更新頑張ってください！ (2022年12月7日 23時) (レス) @page38 id: e86bc2c528 (このIDを非表示/違反報告)
ひまわり(プロフ) - 前々から読ませていただいているのですが、読んでてすごく引き込まれるし、読むたびに続きが気になってしょうがなかなってしまいます！！むちゃむちゃ好きです！！いつも更新ありがとうございます‥！！ (2022年12月7日 0時) (レス) id: 6864ce5b3f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：千笑 | 作成日時：2022年10月31日 10時
