私も生きてたのに

参拾陸 ページ36

刀鍛冶の里の鬼の襲撃を何とか防げて、その後無事に鋼鐡塚さんに刀も届けてもらえた。
深みがまるで違う新しい刀を喜んでいたら、お見舞いにAが来てくれた。



「心配したよ」


「ごめんなA」



Aの頭を撫でていたら、二年前の事を思い出した。
あの頃はAがよく床に居て、時間を見つけては俺が頭を撫でに部屋を訪れた。
床に着いているのは反対だが、変わらない頭を撫でる行為に、何だか安心した。



「A、少し顔色が悪いぞ？」


嬉しそうに俺の手に頬擦りする肌の色がまた、白くなっていて青いのではないかと疑う。
気づけば、隈もあるし疲労が見え隠れしていた。

何か抱えているのでは無いかと顔を近づけると、Aは勢い良く離れた。



「ど、どうしたんだ？」


「あ…ごめんなさい。ちょっ、と…」



一定の距離を保って近づくのを一切許してくれないA。
益々不安になり、俺はAの腕を引いて無理矢理抱き寄せた。



「おっ、兄ちゃん…」


「すまない、無理矢理。…何があったんだ？」



冨岡さんと喧嘩でもしたのか、Aの体は細くて栄養が足りてないと、俺でも分かった。
接吻をして、少しでも健康にしようとAの顎を掴んで自身の口に重ねようとする。



「だめ」


「何で…？」


Aは頑なに断る。もしかして、俺に引け目を感じているのか。
これは、お前の為にしてやりたい、と言う気持ちだけじゃない。
俺はAを愛してるからしたいんだ。



「A、倒れてしまうぞ。」


「違うの、お兄ちゃんが…苦しい思いを、するだろうから…」



それが心配であるのなら、問題は無かった。
俺は力の弱いAの体を寄せて、口と口をぴったりと合わせた。


「っん！ふ、っぅ、は」


「は、んは」



Aは抵抗をするが簡単にそれを静める。
その瞬間。甘い匂いがして、鼻から脳まで直接にとろけそうな痺れが体に響く。
舌を少し開いているAの口から中にねじ込んだ。



「ん、ぬっ、はっ」


「あっ、んぅ、ふ」



熱くなってきた体を冷ます為に、蝶屋敷の服の前を少し開けて風を通す。
Aは抵抗をやめ、行き場の失った手を、晒した俺の胸板に置き直接触った。

触られるのが気持ち良くて、口を離して、Aを布団に引き込み押し倒した。



「っは、はーっ、あ」


「お兄ちゃん…」



気づけば俺は息を荒くしてAの胴に股がっていた。
頭が盛って、満たしたいと言う欲求の赴くままにAの首に顔を埋めた。



「A、好き、だ」


「お、っにい…ちゃ」



はだけた着物から覗く足をするりと触った。

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