私も生きてたのに

拾玖 ページ19

「あ、A。」


「無一郎さん」



空き時間を持て余していて、たまたま蝶屋敷の庭を覗いたらAが居た。塀を軽く乗り越え、縁側から靴を脱いでAの隣に座る。

嫌に思っていたのはあの日で終わった。それからは歳は近いし、話は合うしで関係は良好だった。



「ねえ、髪いじらせて。」


「うん、どうぞ。」



今、Aが纏めている髪を下ろして、隊服に入れている櫛を取り出す。柔らかくて綺麗な髪だ。
自分の髪じゃしないような可愛い三つ編みをしてあげる。


「可愛らしい趣味を持ってるのね。」


「女の子みたいだって言いたいの？」



ぷぅと僕が口を膨らませたらわたわたと焦るA。騙されやすいから、からかうのが楽しい。
髪を編み終えて、紐で結んでやる。他の髪は簪で纏めた。


「えっと…簪…私のじゃないよ。」


「あげる。Aに買ってきたんだから。」


和室の鏡でAは自分の髪を確認すると、ぱっと顔を綻ばせた。



「ありが…っん」


「ん」



あんまり可愛いから口を付けた。



「最近は誰としたの、冨岡さん？」


「えと…嘴平伊之助、さん…」



誰それ。そんな誰かも分からない奴と接吻するなんて、Aは危なっかしい。



「ん、」


「ふっ、は」



冨岡さんとの接吻は仕方無いから目を瞑っているけど、不用意に男と口を合わせないでよ。



「あんまり、他の男と接吻しちゃ駄目だよ。」


「う、うん」


押しに弱いAだからきっと守ってくれる。


「な、何で無一郎さんは接吻をしたんですか。」


「え？…知らない男と接吻した罰、簪のお礼。
ちゃんと二回、貰ったよ。」



もう、と怒ってAは顔を真っ赤にする。

その後は、接吻で体が元気になったAと甘味処へ行った。体力を無くせば接吻が出来るので僕は何回も唇を重ねた。




「っん、もう、大丈夫？」


「じゅ、充分です」



冨岡さんに怒られたけど

＿＿＿＿＿

イメージ画像です。大体こんな感じかな、と。
http://uranai.nosv.org/img/user/data/3/9/1/3914a096ccda91bea74da7718d7feee9.jpg

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