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「さ…今日ね…」
施設の人が緊張したように重たく喋った。
予定では今日、自分の里親希望の人が来る予定。
だけど今日はすごい吹雪だ。
窓ガラスがガタガタ揺れる。
ずっと考えてた。
どうして須貝さんの家に行ったのかなって。
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あの日は凄い疲れ果ててた。
自分は保護されたくなくて、この諦めた生、のたれ死ねばいいと思ってたから
ただがむしゃらに走ってた。
お腹すいて、ところどころ痛くて、
寒くて、指先の感覚がなくなってた。
施設を脱走して数週間したら、街がこれまでにないほど煌びやかになってた。
標識を見れば「東京」の文字。
ここまで来たら、施設員は来れないかなって思ってゆっくり歩いてた。
雪は降ってなかったけど、凄い冷たい風が吹いていた。
「もういいよね…頑張ってよね…9年間……」
『パパ!ママ!』
『やめて!』
『アヒヒヒヒッ』
「もういいよ…やめてよ…」
思い出したくないけど忘れたくないあの過去。
歩けなくなって、お腹すいて、頭がぼんやりしてくる。
靴づれ、筋肉痛、怪我…この旅の勲章。
自分の死の最期………
倒れかけて、意識が飛ぶ直前、
見上げたビルの一室、小さく光があった。
考える由もなく、動かない足を引きずってその部屋までたどり着く。
立ちはだかる扉。
ジャンプしてインターホンを押す。
真っ暗な中に蛍光灯が光廊下の中、インターホンの返事を待つ。
出てきたのは、あの須貝さんだ…
冷え切った体を優しく包んでくれるようなそんなひと。
そういうひと。
そんな須貝さんのような暖かい人が来るのかな…
自分には、もったいないよ………
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「遅いわね…」
辺りは真っ暗。
約束の日、年下の子たちが寝静まっても里親希望の人は現れない。
施設の中、子供で起きているのは自分だけ。
「ねぇ、里親さんにさ、約束してほしいことがあるの。」
今の自分には大事なこと。
これを守ってくれる、そんな人。
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ピーチフラペチーノ(プロフ) - yuriori12911さん» ご指摘ありがとうございます!すみません全然気づいていませんでした…!すぐ修正します。 (2022年9月25日 18時) (レス) id: cb74bd79ea (このIDを非表示/違反報告)
yuriori12911(プロフ) - 多分仮名に あい が登録されているので、「あいつ」の あい が、名前に変換されています。確認してくださると嬉しいです。 (2022年9月25日 4時) (レス) id: 4df0e29a7c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピーチフラペチーノ | 作成日時:2021年1月1日 23時