#33 ページ33
*
「なぁ、Aは大人になったら何になるん?」
そうnethに聞かれたことがある。
『え〜?大人になったらかぁ…』
そう言って私はう〜んと唸っている。
あぁこれは、私の記憶だ。
明晰夢のような、走馬灯のような、不思議な感覚の中にいるんだ。
そう理解した。
『まぁ、ゲームしてると思うけどね。好きに大会出て、賞金取って、生きてく』
「お前それ今Fortniteで成功しとるから言えてんやで」
『えっへへ…ソロでもできるからいいね、Fortniteは』
OWやCSGO、LoLは圧倒的チームゲーだ
だから長い間同じメンバーと大会成績を求めて、積み上げていかなくてはいけない。
私みたいなハンパものが中途半端にやっていいものではないのだ。
Fortniteでもデュオ、トリオ、スクワッドの大会に出ないのは
組んだ人に迷惑をかけたくないから。
私はいつ、この恵まれた環境が奪われるかわからないから。
『nethはどーすんの?』
私は逆に同じ質問をnethに返した。
すると彼は即答した。
「俺はゲームで食ってくよ。限界まで」
あぁ。もうこの人は命をかけたんだな。
そうピリピリと実感したのを覚えている。
この時点で私はnethが次に何を言いたいのかわかっていた。
____Aもプロになればいいのに
でもこれをゆーすけが言えないのを、私は知っている。
nethは言いたくても、ゆーすけはそれを絶対に許さない。
彼は私が頑なにチームゲームに足を踏み入れないことに、何か理由があると
無意識的に気づいていたからだろう。きっとそうだ。
『すごいよnethは。私にはそんな勇気が出ないや』
「……別に。俺はかっこいいを求めとるだけやし」
いつもの落ち着いた声でボソッとした返答が返ってくる。
こいつ…、半分嘘じゃん。
『違うでしょ、“楽しい”からでしょ』
「……いや、それは当たり前やんか…」
『でも辛いことの方が多いはずじゃん』
CSGOは日本では人気がなかった。
なのにゆーすけは中学の時からずっとCSの世界にいる。
『私もゆーすけとやるCSシリーズは楽しいよ』
「やめてよ、そういうの」
『だってnethは最強だもんね!』
「なんで突然褒め始めんだよw やめろって」
『わかった?nethは楽しいからゲームやるんだからね?』
「はいはい」
君から学んだのはゲームは“楽しい”ものであるということ。
584人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「CR」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
mobutyan(プロフ) - 久しぶりにこんなにも感動する小説を読みました。忙しいかとは思いますが更新ずっと待ってます。 (8月17日 3時) (レス) @page34 id: 97fa38bdce (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - とても面白くて定期的に読み返しています。続きを楽しみにしています! (2023年3月8日 23時) (レス) @page32 id: 87831ffb52 (このIDを非表示/違反報告)
ayuriayuri112(プロフ) - 続き待ってます!応援してます! (2023年1月11日 5時) (レス) id: 598e63f5be (このIDを非表示/違反報告)
無花果(プロフ) - 続き楽しみです!! (2022年12月30日 23時) (レス) @page25 id: d6d10578eb (このIDを非表示/違反報告)
さや(プロフ) - 続きが楽しみです!!応援してます! (2022年12月28日 12時) (レス) id: 5a62b2ac70 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:baihua | 作成日時:2022年10月22日 22時