フラグ89 ページ50
正直言って、あの光景には未だに慣れない。
わかってはいる。
ああして触れることが、彼女にとって必要なことだということは。
......だけど。
敦はもやもやとそんなことを考えていた。
頬がほてっている。
「それじゃ、ありがとうございました」
「いえいえ。明日はいつも通り、学校終わりに寄ってくださいね」
彼女の家の扉を閉める。
彼女のまっすぐさは、時に痛々しいほどだ。
...いつかその輝きが、彼女自身を滅ぼしてしまうのではないか。
心配しすぎだと敦は頭を振った。
しかし惑いが消えることはなく、彼は何度も振り返りながら探偵社に戻った。
***
探偵社ビルに入る直前、敦の携帯が鳴った。
「もしもし?」
電話に出てすぐ彼の表情が曇る。
そのまま社に向かって光のごとく駆け出した。
*
「何があったんですか!?」
扉を開けると、太宰がすぐに近寄ってきた。
「お帰り。早速だけど、これ、頼まれてくれ給え」
差し出されたのはAの筆入れだ。
「ちょ、ちょっと待ってください」
電話口で「すぐに帰ってこい」としか伝えられなかった敦は困惑した。
事務所が慌ただしいので何かあったことは事実だろうが、何も知らないため余計不安になる。
まして手の中にはAのものがある。
「Aちゃんの忘れ物に気づいて家に連絡したんだ。学生に筆記用具は不可欠だが、時間も遅いから私たちが届けようと思ってね。ところが...」
彼女はもう家を出ていた。
太宰は目を伏せた。
「携帯電話は!?」
繋がったんですか、という前に、太宰は首を振った。
「そんな...!」
「落ち着け」
今にも事務所を飛び出しそうな敦を国木田の重い声が止めた。
「まだ何かあると決まった訳じゃない」
「でも」
国木田は眼鏡を押し上げ、敦の肩に手を置いた。
「すべきことをすべきだ、いいな?」
まっすぐな視線に射抜かれて、敦は少し冷静さを取り戻した。
「既に付近の捜索を始めている。敦、お前はAの家の方に戻りながら行方を追え」
わかりました、力強く頷くと、敦はあっという間に事務所を走り出た。
その後敦はAの家まで戻ったが、その道のりにも、家にも、彼女の姿はなかった。
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花岳(プロフ) - チョコレヰトさん» ひゃーー!お褒め頂き光栄です......!ありがとうございます。相変わらずだらだら更新していくと思いますが必ずや完結させてみせますので!応援よろしくお願いします! (2019年2月11日 11時) (レス) id: 95c5868039 (このIDを非表示/違反報告)
チョコレヰト - おおお…面白いですね!ギャグ一直線って言うわけでもなく、かと言って重すぎるシリアスも無く…!!丁度良くて、見つけて一気読みしてしまいました…w応援してます!更新頑張ってください!いつまででも待ってます! (2019年1月27日 22時) (レス) id: 9bf0bfde55 (このIDを非表示/違反報告)
花岳(プロフ) - 結愛さん» 素敵なほのぼの文芸部だったんですね...こちらはガチガチ文芸部です...〆切前は常に修羅場で、よく悲鳴があがってます。それはそれで楽しいんですけどね!他校の部活の様子を聞けて嬉しいです!コメントありがとうございました!! (2018年9月19日 1時) (レス) id: 95c5868039 (このIDを非表示/違反報告)
結愛(プロフ) - 私も文芸部だったのですが、私の居た文芸部とは違うのですね…。(私の居た文芸部では皆好きなようにお絵描きしてました) (2018年9月17日 13時) (レス) id: 4e4bc357c1 (このIDを非表示/違反報告)
花岳(プロフ) - 紅夏さん» ありがとうございます!!!!もう、ほんとにありがとうございます。待ってる、と言って頂けるだけで頑張れます。絶対書き上げますので、待ってて下さい!、 (2018年9月17日 11時) (レス) id: 95c5868039 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花岳 | 作成日時:2018年1月10日 23時