フラグ85 ページ46
今日も無事。
玄関の扉の向こうに消えていったAを見届けて、芥川はマフィアへ戻る。
彼女の安全を確認するのは、もう日課になりつつあった。
わざわざ自分が出る必要もないことは分かっていた。
今も私服構成員が彼女の家の周りを巡回しているし、Aが知らない路地裏で黒服たちは刺客を何度も屠ってきた。
芥川でなくてもできる仕事。
だがそんな雑用紛いの仕事を、芥川は進んでこなしている。
庇護欲、というやつだろうか。
この行動理由に無理矢理名前をつけるなら、そんなものになるのだろうか。
自分について顧みることが少ない芥川は、まだよい言葉を見つけられない。
街灯が輝き始める夜を駆ける。
外套のはためく音に混じって、眼下の家宅から上ってきた夕食の香りが鼻先を掠めた。
決して交わることのないだろう、普通の生活。
決して得ることのないだろう、安寧の拠り所。
そこに生きるA。
そこから出ようとするA。
ふと、芥川は視界の端で気配を感じ取った。
黒獣に導かれて、音もなく地面に下り立つ。
暗く、埃っぽい路地裏で、芥川は小さく呟いた。
「羅生門」
目の前の刺客が眼を見開いた。黒獣の牙を引き抜くと、それはばったりと倒れる。
Aを狙う輩だ。
鼻孔をくすぐるのは生臭い鉄の臭い。
電灯が赤い漿液に冷たい光を灯した。
ただ一つ、はっきり分かることがある。
こうして刺客を屠ること。
それが僕の為すことだ。
芥川は再び闇夜に舞い上がった。
爪痕のような三日月が煌々と照っている。
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花岳(プロフ) - チョコレヰトさん» ひゃーー!お褒め頂き光栄です......!ありがとうございます。相変わらずだらだら更新していくと思いますが必ずや完結させてみせますので!応援よろしくお願いします! (2019年2月11日 11時) (レス) id: 95c5868039 (このIDを非表示/違反報告)
チョコレヰト - おおお…面白いですね!ギャグ一直線って言うわけでもなく、かと言って重すぎるシリアスも無く…!!丁度良くて、見つけて一気読みしてしまいました…w応援してます!更新頑張ってください!いつまででも待ってます! (2019年1月27日 22時) (レス) id: 9bf0bfde55 (このIDを非表示/違反報告)
花岳(プロフ) - 結愛さん» 素敵なほのぼの文芸部だったんですね...こちらはガチガチ文芸部です...〆切前は常に修羅場で、よく悲鳴があがってます。それはそれで楽しいんですけどね!他校の部活の様子を聞けて嬉しいです!コメントありがとうございました!! (2018年9月19日 1時) (レス) id: 95c5868039 (このIDを非表示/違反報告)
結愛(プロフ) - 私も文芸部だったのですが、私の居た文芸部とは違うのですね…。(私の居た文芸部では皆好きなようにお絵描きしてました) (2018年9月17日 13時) (レス) id: 4e4bc357c1 (このIDを非表示/違反報告)
花岳(プロフ) - 紅夏さん» ありがとうございます!!!!もう、ほんとにありがとうございます。待ってる、と言って頂けるだけで頑張れます。絶対書き上げますので、待ってて下さい!、 (2018年9月17日 11時) (レス) id: 95c5868039 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花岳 | 作成日時:2018年1月10日 23時