喜と哀 ページ37
阿部Side
今しがた、回診を終えて帰ってきた俺のもとに、嬉しい知らせが届いた。
北斗が目覚めたという、ナースコールを優吾からもらったのだ。
素直にうれしくてうれしくて。
まず一番初めに、樹に院内専用の電話で、北斗が目覚めたことを伝えた。
それだけ終わったら、すぐに北斗の病室までの長い廊下を一目散に走った。
途中で、そんな事情を知るはずもない看護師長から、先生が廊下を走ってどうするんですかって怒られたけど、北斗が目覚めたって言ったら、看護師長も一緒になって走って。
この病院の関係者は、昔から大我を通して石音家と深い付き合いがあるため、古くからいる人たちはみんな北斗のこともよく知っている。
だからこそ、皆がこんなに心配して動いてくれるんだ。
ちょうど、俺たちの朝ごはんを、むかいのコンビニに買いに行って帰ってきたらしい樹とエレベーターの前で鉢合わせて。
そのまま、三人で、廊下を爆走した。
実際は、30秒ぐらいの間の出来事。
でも体感的にはすごく長く感じて、病室につく頃には三人ともヘトヘトだった。
特に、50代の看護師長にはこのスピードしんどかっただろうなって思う。
そんな中でもちゃんと、医療道具をそろえて持ってきてくれるあたりは、やっぱりプロだなって思う。
中に入ると優吾が、北斗の手を握りしめながら静かに泣いてて。
ちょっときれいだなって思ったのは秘密。
泣いている優吾にすかさず駆け寄る、樹。
その樹自身も半泣きで。
あぁ、北斗愛されてんなって思う。
上の二人だって、大我のことも含め、今までいろいろあった分、並大抵じゃない思いをかけて下の子たちを育ててるんだなって言うのが伝わって。
ちょっと感動してたんだけど、感傷に浸っている暇はなくて。
北斗に、問診をしていく。
いくつかの問いに答えてもらった結果、今のところは調子がいいみたい。
ずっと眠っていたから声が出しずらいみたいだけど、取り敢えず目が覚めて一安心。
と同時に、次に自分がこの子に伝えなければならないことの重大さがのしかかる。
なあ、北斗。
お前は、病気のことを伝えても、そうやって悲しそうに笑うだけなのかな?
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杏 - ほく松さん» 只今帰りました!ありがとうございます! (2020年2月5日 22時) (レス) id: f8e1fbc4fb (このIDを非表示/違反報告)
ほく松(プロフ) - お疲れ様です!!!おかえりなさい!!!無理せずに頑張ってください!!!この小説大好きです!!! (2020年2月3日 21時) (レス) id: d93c975b57 (このIDを非表示/違反報告)
杏 - ほく松さん» 有難うございます!無事に終わって帰ってくることが出来ました。これからも頑張って更新していきます。どうぞ宜しくお願い致します。 (2020年2月3日 21時) (レス) id: f8e1fbc4fb (このIDを非表示/違反報告)
ほく松(プロフ) - 大学入試頑張ってください!!!応援してます!!!そして小説の更新も楽しみにしてます!!! (2020年1月29日 23時) (レス) id: d93c975b57 (このIDを非表示/違反報告)
杏 - 雛さん» 有難うございます!続きが楽しみといってもらえる小説を書き続けられるように頑張るのでこれからも、宜しくお願い致します。 (2020年1月22日 22時) (レス) id: f8e1fbc4fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雛 | 作成日時:2020年1月9日 21時