さよなら、と ページ38
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実際に目の当たりにすると動揺して、思わず持っていたトートバッグを落としてしまった。
私の方を向いた目が、見開くのが分かる。
"…ミヨンヌナに俺を好きになってもらえるチャンスを、ください"
今さっき、私の目の前でスンチョリオッパがミヨンさんに言った言葉が頭の中で響く。
「Aちゃん?!あの、これは」
ミヨンさんが勢いよく立ち上がった。
その焦った顔とは反対に、スンチョリオッパは私に笑顔を向けてくる。
「おお!A!帰ってたのか!」
「あ、はい、さっき帰ってきました」
「久しぶりだな〜疲れただろ?」
「あの、Aちゃん、あのね」
2人のそれぞれの反応が面白くて、ふっと息が漏れた。
「あっ、えーと、ごめんなさい、盗み聞きをするつもりはなかったんです。…でも私、2人に言いたいことがあります」
ミヨンさんの顔が不安に揺れる。
あのね、さっき動揺したのは、驚いたのは。
「…私、2人はとってもお似合いだと思います」
スンチョリオッパの言葉を聞いて、一つも傷つかなかったこと。
2人が一緒にいることがあまりにも自然で、何かが心にストンと落ちた。
「…え、Aちゃん?」
また驚いた顔をするミヨンさんに近づいて、耳打ちをする。
「ミヨンさん、あなたが言ったんですよ。もっと単純に考えればいいって。単純に考えた結果がこれです」
ミヨンさんから離れて、今度はスンチョリオッパを見た。
「オッパ、この前は電話してくれてありがとうございました!とっても嬉しかったです」
「Aが元気そうで良かった」
初めて会ったときと変わらない、優しい笑顔。
「ありがとうございます!…じゃあ、私行くところがあるんで」
身体の向きを変え、2人から遠ざかりながら考える。
ああ、だけど。
私がオッパを想っていた気持ちに嘘なんかなかった。
あの日々は本物だった。
くるりと2人の方を振り返る。
ミヨンさんは相変わらず驚いた顔をしてるし、オッパは笑顔のまんまだ。
息を吸って、口を開いた。
「スンチョリオッパ、大好きです!いつもありがとうございます!」
ちゃんと届くように、大きな声で。
そして、笑顔で手を振る。
オッパ、大好きでした。
これは、確かにスンチョリオッパに恋をしていた過去の私への、さよなら。
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sani(プロフ) - ミヌさん» わあ、ありがとうございます( ; ; )嬉しいです!読んでくださり、ありがとうございました!! (2021年4月9日 6時) (レス) id: a75bf160ab (このIDを非表示/違反報告)
ミヌ(プロフ) - 感動しましたTT大好きです。 (2021年4月9日 4時) (レス) id: 8612cef835 (このIDを非表示/違反報告)
sani(プロフ) - まろにゅきさん» うわぁ〜なんて嬉しいお言葉!!ありがとうございます( ; ; )とっても嬉しいです!ああすれば良かったこうすれば良かった、と今になって思ったりもしますが、そう言っていただけて本当に良かったです(*^^*) (2020年6月25日 0時) (レス) id: e36f83df04 (このIDを非表示/違反報告)
まろにゅき(プロフ) - saniさんの小説はスッと入り込めて読みやすくて、綴られる言葉もすごく好きです(^^)私はスンチョルもウジくんも好きだからこのお話、ドキドキしました! (2020年6月24日 18時) (携帯から) (レス) id: 36bf00294b (このIDを非表示/違反報告)
sani(プロフ) - ゆずさん» こコメントありがとうございます!文庫本無限とは!このお話は私なりに書くの楽しかったので、すごく嬉しいです(*^^*) (2018年9月30日 7時) (レス) id: f23e3c8ef3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:sani | 作成日時:2018年6月22日 19時