白のリコリスが咲く8【Harry potter】 (ページ38)

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Aが向かった先は、ホグワーツ中の屋敷しもべ妖精達が働く厨房だった。

ここはホグワーツの大広間の丁度真下に位置しており、日中は彼らの職場、夜は彼らの住処となっていた。

バタン！と突然開いた扉に__身体を休めていた妖精達が何事かと一斉に此方へと注目した。

ぎょろぎょろとガラス玉の様な大きな瞳がそこかしこにたくさんある。

「休んでいるのに、ごめんなさい。貴方達にどうしても、ホグワーツの為に力を貸して欲しいと思ってここに来たの___今夜、ここにヴォルデモートが姿を現す。もう間も無くよ。時間がない__お願い、力の無い、若い生徒達が避難するのを助けて欲しい」

Aの言葉に妖精達はザワザワとざわめきだした。

何事だ、何があったんだ。何故ここに〝闇の帝王〟が？__妖精達が口々に、そう言葉にし、戸惑いの色を見せた。

誰も了承してくれないかもしれない__良い考えだと閃き、ネビルにそうするつもりで伝えたものの、妖精達からの反応はあまり良くなかった。

誰もが恐れて、一歩後ろへと後ずさっていた。

Aがどうしようか迷っていると、しばらくしてから2人の妖精達がスッと前に出た。

「___ドビーは、ドビーは戻って来なかった」

そう口を開いた妖精に、Aは見覚えがあった。

かつてクラウチ家に使えていたウィンキーという屋敷しもべ妖精だ__彼女がドビーの仲の良い妖精だった事が伺え、Aは申し訳ない気持ちが一気に膨らんだ。

「ドビーは、ハリー・ポッターを助ける為に自らに危険が迫って居ると解っていても、そこへ向かったの。彼にも選ぶ権利はあった__それでも、ドビーは〝行かなくては、この魔法界に住む全て友人達に被害が及ぶ〟と立ち向かってくれた__でも、貴方達全員にそうして欲しいと強要はするつもりはないわ。亡きダンブルドアが守ったホグワーツの為に__この闇を終わらそうと立ち向かっているハリーの為に__力を貸してくれる妖精さん達がいれば、力を貸して欲しい。間も無くここは戦場になるの。そうすることが難しい妖精さん達は、どうか、ここから逃げて欲しい」

Aのその言葉を聞いて、彼女のその大きな瞳からボロボロと涙が溢れ出た。

「ドビーは、ウィンキー達のことも、助ける為に、ハリー・ポッターを助けた___友達のドビーの為に、ウィンキーも出来ることをしたい」

ウィンキーがそう口を開くと、ずっと黙ってその横に立っていたしわくちゃな顔の妖精が強い眼差しで顔を上げた。