白のリコリスが咲く【Harry potter】 (ページ8)

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セブルスが〝父親〟だと告げたリーマス・ルーピンと名乗る男性は、Aと同じ様にして、今この瞬間にその事実を知った様子だった。

青白い顔をさせたままの表情の彼を気にすることなく、セブルスは淡々と続けた。

「ロキは、お前と別れた後に妊娠に気が付いたが、この事をお前に告げる事は拒否した。何故か解るか？お前が〝共にいることを望まなかった〟からだ___」

リーマスは俯き、頭を抱えている。
Aはただ静かにその話を聞くしかなかった。

「ロキが命を落としてからは、Aはマグルの孤児院で魔法界とは切り離された日常で暮らしていた。Aの出生を知る者は、我が輩だけだった故、魔法界のことは知らなくても良いと判断していたのだ___この子の身体に異常があると解るまではな」

そこでようやく、リーマスが顔をあげた。先程よりも顔色は良く無いし、今にも泣き出しそうな表情だ。

「___〝身体に異常がある〟、というのは___」

「左様。お前の〝血〟が目覚めたのだ、ルーピン」

段々と進んでいく大人達のやりとりに、Aは全く話が見えなかった。〝魔法〟の存在を知らされ、更には自分がそれを扱える魔女であることと、生まれて初めて会った父親の存在を知ったばかりだ。

それだけのことでたくさんの情報なのに、Aが気にしている自分の身体の不調は、何故だか彼の〝血〟が原因だとわざわざ言うセブルスの真意が解らなかった。

「あの、ええっと___セブルスは、私の体調の変化が彼の〝血〟が目覚めたと言っているけど、それは血が繋がる者としたら自然なことじゃないの？」

セブルスが嘘をつくとも思えないのだから彼が本当に自分の〝父親〟なのだろう。

顔や手の傷は別として、第一印象からもやつれていて不健康そうではあったのだから、身体が弱いのかもしれない____彼のそういった一面を自分が遺伝として受け継いでいても何ら不思議ではない。

何か、大病でも抱えているのだろうかと考えたAの頭の中を否定する様に、セブルスは嫌悪感をたっぷりと込めて口を開いた。

「ルーピンは魔法界の中でも稀な〝人狼〟だ。満月の夜にその姿を変える凶暴かつ野蛮な生き物____そんなやつの〝血〟が君の身体の中で僅かに目覚めているのだ。人狼化はまだ無いにしろ、満月という決まった周期に異常が現れる君の身体は、その〝血〟に蝕まれている」

セブルスが話す間、リーマス・ルーピンは、一度もこちらを見てくれなかった。