白のリコリスが咲く【Harry potter】 (ページ49)

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「名前はジニーから聞いてきたから知っているさ。母は未婚で孤児院育ち__君の生い立ちには大いに興味がある__僕と似ているからね。君のその鋭い感覚は、普通の魔女にしてはズバ抜けている。それは君が〝何者か〟ということに関係している」

彼にそれ以上自分の情報が伝わることは賢明ではない、と思いAは心を閉ざす様にグッと力を込めた。

「貴方こそ、何者なの___ハリーはヴォルデモートと貴方を呼んだけど、それだけじゃないはずよ」

「随分と気の強い__だが聡明な魔女だ。ジニーの手にあるあの手帳は、僕の学生時代の記憶を閉じ込めた日記だ。ジニーが日記に執着してくれたことで、彼女の魔力と生命力は〝記憶〟にすぎなかった僕を外に出してくれた__じきに、ジニーの呼吸は止まる。その時、僕は完全に実体化するんだ」

ジニーが常に抱えていたあの手帳は、ヴォルデモートが学生時代に魔法を掛けた日記だったのだ。

〝消滅した〟といわれる闇の魔法使いが、こういった形で姿を現すことは恐怖そのものだ。

しかし、逆を言えばまだ11歳でしかない子どもの魔力に縋らなければならない程、ヴォルデモートはまだ不完全な存在なのではないかとAは感じた。

〝過去〟と〝未来〟、そして〝魂〟に執念を強く抱いているだけの〝日記の中の人物〟なのだ。

「思い通りには、ならないわ__貴方は〝日記の記憶〟にすぎない」

「なんだと！！」

彼が怒りに震えて杖を上げた時、バジリスクが叫ぶ声が聞こえた。ハリーが輝く剣でバジリスクの脳天を突き刺したのだ。

しかし、ハリーの腕にはバジリスクの毒牙が刺さってしまった。彼はそれを引き抜くと、ふらふらとAとジニーのそばに戻り、膝をついてしまった。

「どうだ？たかが日記にやられる気分は」

苦しそうに息を吐くハリーの背中をさすりながら、Aは側にあったバジリスクの毒牙を握った。ハリーが不思議そうな顔でこちらを見たが、Aはヴォルデモートに挑む様にして口を開いた。

「その〝日記〟が無くなれば、貴方はどうなるのかしら」
「何を__まさか、辞めろ！」

彼がそう叫んだのと、Aが日記に毒牙を突き刺したのは殆ど同時だった。

部屋中に広がる叫び声とともに、日記から黒いインクが溢れ出てくる__それを見たハリーもAに自分の手を重ね一緒に毒牙を突き刺した。

ヴォルデモートが消えたのと同時に突如現れた光の塊がAの身体に当たり、彼女はそこで意識を手放した。