白のリコリスが咲く【Harry potter】 (ページ46)

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興奮するクレヴァを抑え込むようにして抱えながらあの場を去ったAは、少しずつ不安を感じ始めた。

__どこに脳みそがあるかわからないものを信じてはいけない

何かの文献だったが、夏休み中に魔法界のことを知りたいと思い様々な本を読み漁っていた時に書いてあった文章が思い浮かんだ。

まさに、あの手帳がそれだと思った。

ジニーの持つ手帳からは強い魔法の力を感じたが、好奇心が僅かにあって様子を伺っていたAは、文字が浮かび上がったあの瞬間、〝見てはいけない〟と感じてしまう程の恐怖心が芽生えたのだ。

何より一心不乱に文字を書くジニーの姿も、彼女らしくない。

最近では可愛らしい微笑みすらもないし、いつも力がない様にふらふらしている。よく眠れていないのかクマが目立っているし、艶やかな赤毛もどこかパサパサしている様にも感じていた。

それなのに、何かを書くジニーは力強い眼差しでそれを見つめていたのだ。

____まるで、その魅力に引き込まれている様に。

「もう、クレヴァ落ち着いて___」

Aが何と言おうと、お気に入りの餌やおもちゃを与えようともクレヴァはフーフー！と逆毛を立て続けていた。

____クレヴァはどうして最近こんなに機嫌が悪いのだろう

困り果ててそう思ったAだったが、ふと、クレヴァの血筋のことが頭に浮かんだ。

クレヴァは猫と魔法生物のニーズルのハーフだ。ニーズルは、高い知性と怪しい人間を見破る能力を持った猫科の魔法生物と言われている___

そこで、Aはハッとした。

「クレヴァ、貴方、まさか____」

「ジニーじゃなくて、あの手帳の魔力に対して反応しているの？」

飼い主のその言葉に、クレヴァは『ようやく解った？』とでもいう様に鼻をフン！と大きく鳴らして、毛を立てるのピタリ、と辞めた。

「なら___ジニーの手から、あの手帳が無くなれば、ジニーは元の元気な姿に戻れるのね」

クレヴァはその言葉を肯定するように「ニャア」と鳴くと、尻尾を振って用意された餌を食べ始めた。

『感覚を信じ、知識と共にその力を上手く使う事で、多くの問題を解決する事ができるじゃろう』

____先程感じた手帳への〝恐怖〟も自分の感覚からのものなのであれば、それを信じ、ジニーの為に動かなくてはいけない。

Aは決意する様にギュッと自分の手のひらに力を込めた。

その決意が後に〝秘密の部屋〟に関わってしまうことなど、少しも想像していなかった。