白のリコリスが咲く【Harry potter】 (ページ4)

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A・グレイディは、孤児院の中でも浮いた存在の少女だった___趣味は植物の観察と読書、記憶力は抜群にあって成績も素晴らしい。

しかし、何故か彼女に嫌なことが起こると突然突風が吹いたり、危なかったりすると危険な物がパッと姿を消す。

あまりに続く不思議な現象に、周りに人が寄り付かなくなったのだ。

『Aは変わっているわ』
『あまり近付きたくないな』

誰が何を考えているのか、何故だかAにはすぐに解ってしまう程、人の考えがどんどん頭に流れ込むことがあった。

それは満月前になると、特にそうだった。

何かの力がぐるぐると湧いてくるような感覚。

周りの〝声〟が余計に気になり、満月の前後は自室に籠ることが多くなった。

それでいて、動機も激しくなる。
爪が伸びるのも早く感じるし、匂いにも敏感になる。

____わたし、きっと、普通ではないわ

そのことは年頃のAにとって、１つの悩みでもあった。

周りから浮いてしまう理由は、もう１つあった。

それは、身寄りのない孤児が集まる施設でありながら___Aにだけ、誕生日頃の夏になると訪ねてくる人物が居るのだ。

黒い髪の毛に、真っ黒な服装で身を包んだその人物は、セブルス・スネイプだ。

物心ついた時からAを訪ねてきてくれていた彼が、もしかしたら〝父親〟なのかもしれない、と期待したこともあったが、彼女が尋ねるよりも先に『私は君の母親の〝友人〟であるから〝保護者〟を務めてはいるが、決して〝父親〟ではない』ときっぱり言われてしまった。

〝父親〟ではなくても、セブルスはとても優しかった。

母親のことを知らないAに生前の写真をくれたり、形見であるムーンストーンのネックレスを手渡してくれたりした。

何より、自分の中にある〝普通でない〟感覚が、セブルスにもあるように感じて、気持ちが安らいだ。

母親の亡くなった理由は分からなかったが、こうして自分に〝頼れる大人〟を見つけてくれていたことに感謝しながら、Aは自室から見える満月をそっと覗き込んだ。

今夜もやっぱり、なんだか気分が優れなかった。