050:キンモクセイ ページ4
いつの間にやら夏の気配も遠のいてすっかり肌寒くなってきたそんな夜。
私は降谷さんの…というより安室透の家のピンポンを延々と連打していた。
メゾン木馬。実を言うと安室透の家は私の家の随分近くにあるのだ。
『安室さーーん!!いるのはわかってますよー!出て来なさーーい!!』
そう叫びながらインターホンを鳴らし続ける。周りの部屋の方々がお出かけ中なのは確認済である。
それを続けて1分後。
彼はようやくバンッと荒々しく扉を開けた。
「なんだようるっさいな!!!」
『ひえっ』
そんな声を上げてしまったのは彼の激おこ顔が怖かったからみたいな可愛らしい理由ではない。
出てきた降谷さんはお風呂上がりだった。
もう1度言おう。
風 呂 上 が り だ っ た 。
急かしてしまったせいで髪はびしょ濡れ。上半身は裸。首にはタオル。
この前水着を見た時とはなにかが違うその姿はもはや五体投地しかできない。眩しすぎて目が潰れる。
えっっ???何この人さては神か??後光が差してるよ??
「おい玄関先で拝むな」
『しまった5円玉切らしてる』
「賽銭はいらねえって言ってんだろ。
で、何の用だ」
降谷さんはめちゃくちゃ偉そうに壁にもたれ、腕組みをして見下ろしてくる。
恐らく機嫌最悪なのだろう。しかし水の滴る顔が良すぎて全てが許せる。顔が良ければ全て良しだった。どうしようタイトル変えなきゃ。
しかし私はこれからそんな神にお願いごとをしなければならない。
合わせた手は離さないまま、頭を下げた。
『うちのお風呂のシャワーが壊れました。
お風呂貸してください』
「はぁ?」
『日本酒をお持ちしました』
「よかろう入れ」
これまた偉そうに顎で部屋の中を指された。
…あ、やばいなんかイラッと来てしまったな?
やっぱり限度はあるな。顔が良ければ全て良しとか全然そんなことないわ。
『お邪魔しまーす!』
そういえばこの部屋に入るのは初めてだなぁ。
なんて思いながら部屋の中を見渡す。
…うん、想像はしてたけど本当に最低限の物しか置いてないね。
壁に立てかけられたギターを眺めながら荷物を下ろす。
「入るならさっさと行ってこい」
『はーい。あ、私お風呂は長いのでよろしく』
「はいはい」
降谷さんは適当に返事をしながらパソコンを開く。
今から仕事かー、相変わらず多忙だなぁ。
ベランダに見えたセロリの苗に若干引きながらも脱衣場に入って扉を閉めた。
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びびか(プロフ) - この作品の作り込みが凄すぎて本当に好きです。。素敵な作品に出会えて良かったです!ありがとうございました! (2023年3月27日 20時) (レス) @page32 id: b527a1d6e3 (このIDを非表示/違反報告)
わか - 想像するだけでこっちが照れてくる (2021年12月7日 15時) (レス) @page30 id: 9e519c38d5 (このIDを非表示/違反報告)
よる - ほぉ…これが降谷さんとの至高の領域だな???ちょっと最上級の語彙力調達してきますね?手持ちの語彙じゃこの素晴らしさは語れないので!!!! (2021年4月30日 23時) (レス) id: 6e0ab3a00d (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - あむむさん» 完結してからしばらく経ってるのに見つけてくれてありがとうございます…!!そんなに褒めて頂けるなんて嬉しすぎて私の心臓が取れます…!25機も消失してご無事ですか!?笑 最後まで読んで下さりありがとうございました!! (2018年11月9日 17時) (レス) id: 0fab2bc529 (このIDを非表示/違反報告)
あむむ - 初めまして。どうにもこうにも我慢出来なくてコメント失礼します!泣きましたキュンキュンしました心臓取れました辛すぎましたその文章力に脱帽しました!25機くらいは消滅しました…!完結おめでとうございます。お疲れ様でした! (2018年11月8日 21時) (レス) id: eaf01be664 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年9月21日 21時