顔が良ければ全て良しだと思うなよ！！ ２【降谷零/安室透】

epilogue 2：クローバー ページ30

『今まで失礼な態度を取り続けてしまい、申し訳ありませんでした』

｢…君が謝る必要はない。
俺も配慮が足りずすまなかった｣


そう返した赤井捜査官に顔を上げる。

思わず数度目を瞬かせ、そして軽く笑ってしまった。

あぁ、この人もだ。

私の周りは本当にこんな人ばっかりだ。


『あなたは優しい人ですね』


そんな私の言葉に、今度は彼が目をぱちくりさせる。

ほんと、誰も彼も優しすぎる。


『顔も名前も知らない、声だけしかわからない女のことをずっと気にかけてくれていたんでしょう』


たまたまスーパーで顔を合わせて少し話しただけでわかるほど、何度もあの音声を聞いたのだろう。

彼がそこまで気にする必要なんて全くなかったのに。

何年も経ったのにまだ気にかけて、わざわざ頭を下げてくれた。


『ご迷惑をおかけしました。
それから…ありがとうございました、赤井捜査官』

｢………｣


再び深く頭を下げる。

彼は何も言わない。

今はそれが妙に心地よくて、私も何も言わず頭を上げて立ち去ろうとした。

しかし彼はその前に私に尋ねた。



｢君は何故こんなところにいるんだ？
公安警察に戻ったのか？｣

『あはは、まさか。流石にもう戻ったりはしませんよ』


辞表は提出してしまったし、体もなまりまくりだし、本屋を辞める気もないしね。

私は手に抱えていた書類をチラリと見せて言う。


『組織の件の後処理を手伝わされてるんですよ。
ありえないですよね？ほんとこき使いすぎです』

｢そう言う割には嬉しそうだな｣

『…あなたのそういうところ嫌いです』


くそ、いい感じにおさらばしようと思ったのに。やっぱりどこか癪に障る男だ。

彼は愉快そうに笑いやがる。


｢ビルが大炎上してる前であんな熱烈なラブシーンを見せつけられたら言いたくもなるさ｣

『あ゛あ゛ぁ゛貴様ああああ！！！！今すぐその記憶を消せえええええ！！！』

｢…君、降谷くんに似てきたんじゃないか？｣


そうなのだ。あの告白からキスシーンまで全部結構な人から見られてたのだ。

あのあとどこからともなく拍手が湧いてようやく気づいた。

満身創痍な降谷さんがダッシュで逃げようとして大変だった。

思い返すだけでため息が漏れる。



『…ま、こき使われるのは慣れてますよ。しょうがないです』


そう、仕方のないことなのだ。

頼まれれば受けるしかない。

なぜかって、それはもちろん…

私は書類を抱え直し、笑って言った。


『私は降谷さんの協力者ですから』

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