06.菫色 ページ7
説教を始めて2時間くらいが経ったところで、風見から「降谷さん、そろそろ…」と仲裁が入った。
確かにそろそろ切り上げないといけない時間だ。
「仕方ないな。続きは今度だ」
『え!?まだ続きがあるんですか!?』
ひえぇ、と言いながら立ち上がろうとする犬飼。
しかし2時間も正座していたら流石に足が痺れて使い物にならないらしく、無様に転びそうになったところを腕を引っ張った。
『あ、すみません!』
「いや…」
距離が縮まり、さっき弾丸に吹っ飛ばされた髪が目に入る。
無意識に彼女の首の後ろに手を回して、焦げた髪の先を掬い上げた。
「……髪、悪かったな」
『え?…あぁ、大丈夫ですよ!もうすぐ切るつもりだったので』
そうは言うが、この髪を撃たれたのは完全に俺のせいだ。
髪くらいで済んで良かったなんて、俺が言えるセリフじゃない。
「助かったよ、あの時はありがとう。」
『へ…』
俺が無傷だったのはこいつが押し倒してくれたおかげだ。
腕を掴んだまま目を見て礼を言う。
そんな俺を前に、犬飼はパチパチと大きな瞳を瞬かせた。
そして照れたように頬を染めて、嬉しそうに笑った。
『はいっ!』
…良い笑顔するなぁ、こいつ。
うっかり見とれてしまう。
しかしその笑顔はやがてふふふ、と何かを企むようなものに変わった。
『降谷さん』
「なんだ」
『あの時、Aって呼んでくれましたよね』
「………なんのことだ」
『えー!?誤魔化すんですか!?』
ちっ…気づいてたのかよ。
直前にあんな会話したからだ。
咄嗟に下の名前が出てしまった。
彼女は目をそらす俺をじーーーっと見つめる。
『ふーるーやーさん、約束したじゃないですか』
「頑張り次第って言ったろ」
『ええー!髪に免じて許してくださいよー!』
「そ…っれを使うのはずるいだろ!」
くっそ…こっちが素直に謝ったからって調子に乗りやがって…!
『そっちがいいです。ね、ダメですか?』
「…………っ」
未だに顔を逸らし続ける俺の横顔に上目遣いの視線が突き刺さる。
あ〜〜〜くそ、しょうがない。こいつまじで折れそうにない。
「……………二人の時だけだからな」
その言葉を聞いた瞬間、彼女はぱあっと花が咲いたように笑った。
『やったー!ありがとうございます!!』
…まぁ、なにか理由もあるようだし、名前呼びくらい別にいいだろう。
太陽みたいなこの笑顔を見るのも悪くない。
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如月.夜月(きさらぎ よつき)(プロフ) - 立夏さん» んふふ!良かった!同じですね(*´▽`*) (2021年1月20日 19時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 如月.夜月(きさらぎ よつき)さん» えっっっっめっちゃいいですねそれ最高ですね!!!??(笑)私もめちゃくちゃ見たいです!!!!!!! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ムースさん» わ〜!そんなにたくさん読んで頂けるなんて本当に嬉しいです!ありがとうございます! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
如月.夜月(きさらぎ よつき)(プロフ) - 安室さん(怪我)、狂犬ちゃん(真顔)にお姫様抱っこされてほしいな… (2021年1月17日 13時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
ムース - 3周目です!好きすぎる! (2020年12月12日 21時) (レス) id: 38b2fa8d4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年7月6日 23時