04.藍色 ページ5
「…っくそ!」
そのまま転がるように壁の影に戻る。
俺には弾丸は掠ってない。
まさかこいつが撃たれたんじゃ…!と嫌な考えが頭をよぎった。
「おい!大丈夫か!?」
『いたた…大丈夫ですよ、髪に掠っただけです』
肩を掴んで犬飼の体を起こしたところで、ようやく彼女の後ろ髪がふっ飛んでいることに気づく。
セミロングだった茶髪の先が焦げ、首の中ほどくらいの長さまで短くなっていた。
「…体には当たってないな?」
『はい!降谷さんこそ大丈夫ですか?』
「ああ、こっちはなんとも…」
『それはよかった』
へらりと笑う犬飼。
とりあえず無事だったことに安堵の息が漏れる。
しかし彼女は、その笑顔のままでカチャリと拳銃の安全装置を外し、廊下を見ながら言い放った。
『──で、誰ですかねぇ。降谷さんを撃った野郎は』
その声に、背筋が凍った。
は…なんだよ今の。
殺気。
笑っているはずの瞳から漏れ出るおぞましい量の殺気に、目を疑う。
びり、と肌が痺れた。
なんなんだこいつ。
今のは、どう考えても常人のそれじゃなかった。
「…おい、殺すなよ」
思わずそんな言葉が口から出た。
新人に言うようなセリフじゃないのに。
犬飼はそれを聞いてまたゆるりと笑う。
『はい、わかってますよ』
笑顔の奥に得体の知れないものを感じて、気圧されそうになる。
ゆっくり立ち上がった彼女は、こっちを見て静かに言った。
『降谷さん、覚えておいて下さいね』
熱くて冷たい何かを込めた瞳が揺れる。
『私はあなたの犬ですから。
あなたに銃を向ける輩は、全員噛みつきにいきます』
刹那、彼女が迷うことなく地面を蹴った。
「は!?ちょっと待て!犬飼!」
俺の制止の声を聞かずにその小さな体で飛び出した。
当然さっきの弾を撃った奴が犬飼に向けて銃を放つ。
飛び交う弾丸の中を駆け抜ける。
弾の方向から敵の位置を特定し、一直線にそこへ向かう。
見てるこっちは何も出来なかった。
それほどまでに早かった。
犬飼が拳銃を構えた次の瞬間には、全てが終わっていた。
『降谷さーん!片付けましたー!もう大丈夫ですよー!』
足を撃たれ気絶させられた男の横で、人懐っこい笑顔で手を振る。
その瞳からは、もうあの殺気は消えていた。
目の前で繰り広げられた光景に、俺を含めたその場にいる全員が呆気に取られていた。
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如月.夜月(きさらぎ よつき)(プロフ) - 立夏さん» んふふ!良かった!同じですね(*´▽`*) (2021年1月20日 19時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 如月.夜月(きさらぎ よつき)さん» えっっっっめっちゃいいですねそれ最高ですね!!!??(笑)私もめちゃくちゃ見たいです!!!!!!! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ムースさん» わ〜!そんなにたくさん読んで頂けるなんて本当に嬉しいです!ありがとうございます! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
如月.夜月(きさらぎ よつき)(プロフ) - 安室さん(怪我)、狂犬ちゃん(真顔)にお姫様抱っこされてほしいな… (2021年1月17日 13時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
ムース - 3周目です!好きすぎる! (2020年12月12日 21時) (レス) id: 38b2fa8d4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年7月6日 23時