28.桃色 ページ30
「ほんっっといい加減にしろよこの単細胞が」
『すみません…』
あれから適当に取り繕って、老夫婦の無事も確認して、諸々のことが全て終わった頃には明け方近くになっていた。
薄明るくなってきた空の下、始まるのは当然の如く説教。
しゅんとして頭を下げたAは最早条件反射のように正座しようとする。
それを止めて、側を通った公園のブランコを指さした。
「あっちに座れ」
『え?』
パチパチと目を瞬かせる彼女の腕を引いて公園に入る。
半ば無理やりブランコに座らせ、Aの顔をじっと見つめる。
意味もなく笑って見せた彼女の足を、げしっと軽く蹴った。
『…っ、』
一瞬だけ唇の端が跳ねた。
けれどAは、それを誤魔化すように再びニッコリと笑う。
その笑顔が今は無性に頭に来て、俺は跪いてAの足首を乱暴に掴み上げた。
「バレてんのわかってる癖にまだ誤魔化すとかふざけてんのかてめえ!!!!」
『ぎゃあああ!!痛い痛い痛い痛いストップごめんなさい許して降谷さんんんん!!!!!』
「下手な嘘つきやがって!!!俺相手に通用すると思うなよ!!!」
『ちょ、まじで痛いですって!!ごめんなさいすみませんでしたああ!!!!!』
早起きのおじいさんがギョッとした顔でこっちを見て去っていった。
怪しいものじゃないです。
ちょっと部下の足を上げてパンプスを無理やり脱がせてるだけです。
赤く腫れ上がった足首を見て、Aを睨みあげる。
気まずそうに目を逸らされた。
ったく…なにが無傷だ。見栄張りやがって。
平気な顔して笑ってんじゃねえよ。
さっき貰っておいた湿布を取り出す。
それを見てAが『えっ』と声を上げた。
『い、いつから気づいてたんですか…!?』
「着地した時から。あの足のつき方でどうもならない方がおかしいからな」
『まじで最初からじゃないですか…』
はは…と乾いた笑いを漏らすA。
湿布を貼れば、ブランコが小さく音を立てた。
『ありがとうございます、降谷さん。
あと…色々とごめんなさい』
「…何度も言ってるが、後先考えずに飛び出すのはやめろ。
それと、怪我してるならちゃんと言え。
痛いなら痛いって言ってくれ」
大きな瞳が見開かれて、揺れる。
そしてAは、照れくさそうに、嬉しそうに、はにかむように笑って、いつも通りの角度のおかしい敬礼をした。
『はいっ』
その笑顔に、心臓が変な音を立てた気がした。
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如月.夜月(きさらぎ よつき)(プロフ) - 立夏さん» んふふ!良かった!同じですね(*´▽`*) (2021年1月20日 19時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 如月.夜月(きさらぎ よつき)さん» えっっっっめっちゃいいですねそれ最高ですね!!!??(笑)私もめちゃくちゃ見たいです!!!!!!! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ムースさん» わ〜!そんなにたくさん読んで頂けるなんて本当に嬉しいです!ありがとうございます! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
如月.夜月(きさらぎ よつき)(プロフ) - 安室さん(怪我)、狂犬ちゃん(真顔)にお姫様抱っこされてほしいな… (2021年1月17日 13時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
ムース - 3周目です!好きすぎる! (2020年12月12日 21時) (レス) id: 38b2fa8d4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年7月6日 23時