26.京紫色 ページ28
人の波を縫うように駆けていくAを追いかける。
くっそ!無駄にすばしっこくて追いつけねえ…!
もう既に1度軽い爆発が起こっている。
でも多分これで終わりじゃない。
ただの警備員にAを止められるわけもなく、彼女はスピードを緩めることなく柵を飛び越えて館内に駆け込んだ。
「え!?安室さん!?」と新一くんの声が聞こえたが、構ってる暇もなく小さな背中を追って入口をくぐる。
爆発が起こったのはエントランス付近。
思った通りガレキだらけでところどころ火も上がっている。
Aは通路を塞ぐガレキの前でようやく立ち止まった。
「おいA!」
『…売店あたりではぐれたって言ってたんです。
この先でしたよね?』
「え?あ、ああ…」
『降谷さんは戻ってて下さい。この隙間、私なら通れるので』
いつもなら見ることのない鋭い視線に一瞬反応が遅れる。
その隙にAは躊躇なく瓦礫の間の小さな隙間を通り抜けた。
確かにここは俺には通れそうにない。
アホ。だからって誰がこの状況で戻れるか!
携帯を取り出して、民間人がまだ残っているかもしれないことと、保護し次第すぐに戻ることを新一くんにメールする。
直後、向こうから『降谷さーん!見つけましたー!』とバカでかい声が聞こえてきた。
『気を失ってるみたいです!そちら側から引っ張ってもらっていいですか?』
「ああ、急ぐぞ」
Aが隙間の前に下ろした老婦人を引っ張りあげる。
よし、あとはもう出口まで走るだけだ。
「A、お前も早く…」
しかし次の瞬間、大きな爆発音が耳をつんざいた。
うわ、このタイミングで2度目の爆発かよ!
咄嗟に老婦人を抱え上げ、二人同時にその場から飛び退く。
目の前のガレキの山が音を立てて崩れ落ちた。
唯一あった隙間が塞がる。
まずい、まだAが向こうに…!
老婦人を背負い、すぐにAに電話をかけた。
数回のコールのあと、通じたことにひとまず安心する。
「大丈夫か!?」
『はーい無傷ですよ〜!』
アホっぽい声に力が抜けかけた。
「どうだ、こっちに来れそうか?」
『無理ですねー。窓へはなんとか行けそうなのでそっちから飛び降ります。降谷さんは早くおばあさん連れて出て下さい』
「…わかった」
グッと奥歯を噛む。信じるしかない。
俺は携帯を握り締めて瓦礫に背を向けた。
「死ぬなよ」
『大丈夫ですよ、こんなところでは死ねませんから』
その声を聞き、出口へ駆け出した。
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如月.夜月(きさらぎ よつき)(プロフ) - 立夏さん» んふふ!良かった!同じですね(*´▽`*) (2021年1月20日 19時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 如月.夜月(きさらぎ よつき)さん» えっっっっめっちゃいいですねそれ最高ですね!!!??(笑)私もめちゃくちゃ見たいです!!!!!!! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ムースさん» わ〜!そんなにたくさん読んで頂けるなんて本当に嬉しいです!ありがとうございます! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
如月.夜月(きさらぎ よつき)(プロフ) - 安室さん(怪我)、狂犬ちゃん(真顔)にお姫様抱っこされてほしいな… (2021年1月17日 13時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
ムース - 3周目です!好きすぎる! (2020年12月12日 21時) (レス) id: 38b2fa8d4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年7月6日 23時