10.鉛丹色 ページ12
「お兄さん、ちょっとでいいからうちらと遊ぼうよ」
「すみません人を待ってるんで…」
「じゃあ来るまでで良いから〜」
めんどくさ…
思わず心の中でそう呟いた。
自分を囲む3人の女性。
いわゆる逆ナン。
さっきからずっとこの調子。なかなかしつこくて全然引いてくれない。
遊園地のエントランス前だなんて嫌な予感はしてたけれど。
今日はとある組織の裏取引がここで行われるから、これからAと共に張り込むことになっている。
普段なら一緒に来るが、俺が別件で外へ出てたから現地集合ということになったのだ。
しかし当のAが電車が遅れてるんです〜なんてほざいてやがる。
あいつまだ来ないのかよ…飼い主を待たせるだなんていいご身分だな…
さてこの状況をどう切り抜けようかと考える。
その時だった。
誰かの腕が俺の腕に絡みついて、強く引かれた。
『ダーーーリーン!!!遅くなってごめんねー!!』
「へ」
聞き覚えのありすぎる声と予想外すぎる内容に目が点になる。
は、え?A?今ダーリンとか言ったか?
『せっかくの初デートなのに遅れちゃったー!
えへへ、今日は楽しもうねー!!』
そのまま半ば引きずられる形で腕を引っ張られる。
去り際に悔しそうな女達の顔が見えた。
「ちょ、A、」
『やだなぁダーリンったら照れちゃって☆
相変わらず可愛いんだから!』
いやいやいや誰だてめえ。
やたらでかい声でそんなことを言いながら角を曲がる。
そして曲がった瞬間、Aはシュバッと無駄に高速で絡めていた腕を離して俺から距離を取った。
『すみませんほんとごめんなさいこれしか方法が思いつかなくて、あの、いきなり腕組んだりとか、ほんと、すみませんでした!!!』
「え?いや助かったけど…?ありがとう」
なんでそこまで謝るんだ。
ダーリンとかまで言う必要があったかは置いといて、あの場では1番効果的なやり方だったろうに。
Aはパタパタと手で自分を扇ぐ。その顔は少し火照っていた。
『き、緊張しましたぁ…なんかあのお姉さんたちすごいギラギラしてた…最後めっちゃ睨まれた…』
「わかる、ちょっと怖いよな… 」
『逆ナンなんて実在したんですね』
「俺も久々にされた」
…仕方ない。こいつのおかげで撒けたし、俺を待たせたことはチャラにしてやるか。
「おい行くぞ」
『はーい!』
「伸ばすなって」
すっかり平常運転な犬を連れて、俺は遊園地へと足を踏み入れた。
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如月.夜月(きさらぎ よつき)(プロフ) - 立夏さん» んふふ!良かった!同じですね(*´▽`*) (2021年1月20日 19時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - 如月.夜月(きさらぎ よつき)さん» えっっっっめっちゃいいですねそれ最高ですね!!!??(笑)私もめちゃくちゃ見たいです!!!!!!! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - ムースさん» わ〜!そんなにたくさん読んで頂けるなんて本当に嬉しいです!ありがとうございます! (2021年1月20日 2時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
如月.夜月(きさらぎ よつき)(プロフ) - 安室さん(怪我)、狂犬ちゃん(真顔)にお姫様抱っこされてほしいな… (2021年1月17日 13時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
ムース - 3周目です!好きすぎる! (2020年12月12日 21時) (レス) id: 38b2fa8d4e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年7月6日 23時