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『あー、そうだ降谷さん。例の俳優、十中八九黒ですね』
「証拠掴めそうか?」
『結構チョロいのでそろそろいけそうです』
都内にある人気の遊園地。
そのジェットコースターの待機列に並びながら、私はグッと親指を立ててそう返した。
芸能界はちょこちょこ黒い部分があるから私も公安の協力者としてなにか見つける度報告してるのだ。ハニトラもまぁ、そこそこの頻度でしてたり。
頼んだぞ、と言った降谷さんは少し暑そうにキャップのつばを上げた。
「ていうか役作りのためのデートだろ?いいのかよ、こんな話してて」
『えー?いいですよ、そこまでカッチリしなくても。カップルの雰囲気が掴めればそれで』
「カップルねぇ……」
彼は呟いて近くにいる男女を眺める。そしておもむろに私に手を差し出した。
「じゃあ、はい」
『へ?なんですか?』
「カップルなら手くらい繋ぐだろ」
『えっ』
想定外の言葉に思わず動きを止める。
えええ、そりゃデートって言ったのはこっちだけど。でも正直もっと軽い気持ちでの言葉だったんだけど。
『じ、自分で言って自分で赤くならないでくださいよ』
「なってない」
『なってますよ』
「今日暑いんだよ」
『それはそうですけど』
「いいから早くしろよ。中学生じゃないんだから手繋ぐくらいどうってことないだろ」
自分だって照れてるくせに…っ!
そりゃ手繋ぐくらいどうってことないけど、でも仕事でやってるハニトラと一緒にしないでほしい。
相手は降谷さんだぞ。中学生にかえったって仕方ないでしょ。
だからといってこのまま手を取らないのもなんだか癪で、おずおずと指を伸ばす。
しかし、手が触れそうになったその瞬間だった。
「何名様ですかー?」
『えっ!?』
いきなり声をかけられて思いっきり肩を揺らした。
目の前にはスタッフの人。どうやらいつの間にか順番が回ってきていたらしい。
隣の降谷さんが一瞬むっとした顔になったのも気づかず慌てて手を引く。
けれど、その手は強引に彼に掴み取られた。
『うわ!?ちょ、』
「2人です」
「5番へどうぞー」
降谷さんは私の手を握って言われた場所へ向かう。
いや、え!?この人こんなことするタイプだったっけ!?
『ちょっと降谷さん…!』
「…決めた」
『え?な、なにを…』
振り返った彼はもう赤くなんてなくて。
まっすぐ私を見据えた降谷さんは、より強く手を握っていった。
「今日の俺はお前の彼氏だろ」
『…はい?』
「だったら徹底的に彼氏になってやるよ」
…え、なんでこの人こんなやる気になってんの?
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なでぃあ - すみません💦立夏さんの作品一覧の中でパスワード保護がかかっている作品を読みたいのですがパスワードを教えて貰えないでしょうか? (2023年1月10日 21時) (レス) id: b7c646722c (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - over the rainさん» ありがとうございます!!私の文章で幸せになって頂けたなんて私の方が幸せです!笑 ありがとうございました!! (2020年3月14日 22時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - 話の構成も文章の書きかたも素敵で、幸せな気分です!これが神だ。嬉しくて泣けました(マジ)応援してます! (2020年3月5日 10時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - なのなの-VIIさん» わぁ〜!とってもご無沙汰な更新でしたが読んで頂けるなんてすごく嬉しいです!!ありがとうございます!!私もはっぴー満点で眠れます!笑 (2020年2月9日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
なのなの-VII(プロフ) - 更新ありがとうございます! めっちゃ嬉しいです! おかげで幸せな気分で寝れます! (2020年2月8日 23時) (レス) id: 3d69e77dfd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年11月18日 21時