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降谷side
『“山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に掉させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい”』
鈴を転がしたような声。
あまりにもうますぎる朗読。
伏せられた長い睫毛。
窓から吹き込む風に髪が揺れて、端正な顔立ちが一際目立った。
ただの高校教師になど到底見えないと思った生徒諸君は当たりである。
あの野郎もうちょっと抑えろよ…
男子生徒の目は全員揃って教科書ではなくAに向いている。なに見てんだエロガキども。
というか男子だけじゃなくて女子の視線まで釘付けである。最早授業になってない。
かく言う俺も、教室の1番後ろに立っているのをいいことに彼女のことをガン見していた。
スカート短すぎじゃないか?あれ絶対教育に悪いだろ。
教師なんだからという謎の理由でかけたらしい伊達メガネは普段にはない落ち着きを醸し出す。
透き通るようなAの声は心地よく耳に馴染む。
あーあ…罪なやつだな。これは間違いなく純粋な男子高校生の人生狂わせる。
そのまま1度も教科書を見ることなく、気づけばチャイムが鳴った。
…あ、やべ。まぁいいや。授業の内容ならAに聞けばわかることだ。
起立、礼、と学級委員の声が響き、Aが教室から出ていく。
そのあとを追おうとした時、女子生徒たちに囲まれた。
「安室先生!」
「先生って何年生なの?」
「彼女いる?」
絶対聞かれるだろうなと予想していた質問に苦笑いを零す。
名門私立校にしては短いスカート。十中八九折っているのだろう。浮いた話が好きそうな子達だ。
「学年は4年。彼女はいないよ」
「え、ほんと!?」
「うそー!絶対いると思ったのに!」
「じゃあ好きな人はー?」
「あはは、それはどうかなぁ」
さっきこの教室を出て行った人ですね。
とは言わなかったが、女子生徒たちの話題はそのまま移り変わる。
「A先生といい安室先生といい、最近顔が良い先生ばっかり入ってくるよね!」
「あ、なんか校長の趣味らしいよ?」
「まじ?やばくね?」
そんな女子高生にありがちな噂話に、ピクリと顔を上げた。
「…校長?」
「うん、昨年から校長変わったんだけど、それを機に先生もかなり入れ替わってて」
「うちらの担任の先生も別のとこ行っちゃったんだよ」
「…へえ」
小さく声を漏らしたと同時にチャイムが鳴る。
彼女達に別れを告げ、急いで教室を後にした。
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なでぃあ - すみません💦立夏さんの作品一覧の中でパスワード保護がかかっている作品を読みたいのですがパスワードを教えて貰えないでしょうか? (2023年1月10日 21時) (レス) id: b7c646722c (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - over the rainさん» ありがとうございます!!私の文章で幸せになって頂けたなんて私の方が幸せです!笑 ありがとうございました!! (2020年3月14日 22時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
over the rain - 話の構成も文章の書きかたも素敵で、幸せな気分です!これが神だ。嬉しくて泣けました(マジ)応援してます! (2020年3月5日 10時) (レス) id: a4bab14be1 (このIDを非表示/違反報告)
立夏(プロフ) - なのなの-VIIさん» わぁ〜!とってもご無沙汰な更新でしたが読んで頂けるなんてすごく嬉しいです!!ありがとうございます!!私もはっぴー満点で眠れます!笑 (2020年2月9日 0時) (レス) id: 4a977019e9 (このIDを非表示/違反報告)
なのなの-VII(プロフ) - 更新ありがとうございます! めっちゃ嬉しいです! おかげで幸せな気分で寝れます! (2020年2月8日 23時) (レス) id: 3d69e77dfd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:立夏 | 作成日時:2018年11月18日 21時