10→烏滸がましい ページ11
「……。」
私は視線をノートから逸らす事無く凝視する。
そんな時、耳にかけていた横髪が頬を掠めて手元に落ちてくる。
それによって私はゆっくりと現実へと引き戻されて行く。
ふとノートから逸らした視線が向くのは壁に掛けられた時計。
少し茎が絡みついているのは手が届かないからである。
「(もう、こんな時間……)」
私はノートを閉じて机に置いてから立ち上がり背伸びする。
昨日は結局集中出来ずに結局今日急いでA組の皆の事を頭へと叩き込んだ。
そして、念願の彼の名も知れて……
「っ……はぁ〜、だめだ…」
完全に浮かれてるよ、私…
初めての恋心。
思ったよりも早く自覚出来た。
それは、良かったんだけど……
「(君の名を口にしようとするだけでこんなに…)」
煩い鼓動を抑える様に胸に手を当てる。
ここまで自分がヘタレだとは思わなかったです…
□
のんびりと廊下を歩き食堂へと向かい昼食を買う。
何時も早く研究に戻りたいからとサンドイッチだけを買う私。
それを心配された挙句デザートのプリンをおまけして貰った。
「(何だか悪いなぁ…)」
実は密かに食べれる植物を生やし間食をしている私。
正確には研究をする前に個性の調整をするのだが、
その時に食べれるものの方が確認がしやすいのである。
なのでサンドイッチだけで満足と言うよりは、
サンドイッチだけで済まさないと研究が進まない。
だから今、プリンをどうしようかと考えながら最後の一口を咀嚼中。
「(…持って帰る？)」
ふと視線をプリンから逸らして周りへと向ける。
やっぱり友達と食べている人が多いな…
なんて他人事の様に思いながら視線を動かして行く。
その時、私と同じ様に1人で食べている人を見つけた。
そして次の瞬間その人に目を奪われた私。
居るのは当然だと解っているのに私は驚いてつい口の中の物をゴクリと飲み込んだ。
「(轟、焦凍…)」
心の中なのにフルネームで呼んで恥ずかしさを紛らわせる。
個性は半冷半熱で推薦入学者の1人。
つまりは私とは不釣り合いな優等生と言う訳でして…
きっと映画とかで主人公を務めて、
可愛らしいヒロインと結ばれる様な人。
私が恋をする相手には烏滸がましい。
でも、感情と言うものは自分の物なのに制御が効かない。
最悪な出会いの仕方でもそれは他と変わらなかった。
他もそうなのか私が単純なだけなのか…
それは分かんないけど…
この感情は、きっと確かなものだと思うから。
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作者名：自宅警備員先生 | 作成日時：2017年10月16日 18時
